日本耳鼻咽喉科学会会報
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新生児と母親の鼻前庭および鼻粘膜における黄色ブドウ球菌の着床と保菌について
谷川 譲
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1974 年 77 巻 2 号 p. 147-152

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抄録

目的:鼻粘膜上の黄色ブドウ球菌(以下黄色ブ菌という)が起炎性を発揮するに至る過程を臨床的に把握するため,その基礎研究として今回は正常人について黄色ブ菌からみた生息環境の差と,黄色ブ菌を中心とした細菌叢との関係を観察した.すなわち鼻前庭の皮膚と鼻粘膜,および大人と子供の個体差により黄色ブ菌の着床と保菌状態にいかなる差があるかを観察した.
方法:都立大久保病院で昭和45年10月から46年9月迄の1年間に生れた遜院可能の新生児100名とその母親100の鼻前庭および鼻腔を検査対象とした.出生直後から生後1ヵ月とその後は半年毎に2年間鼻前庭および中鼻甲介前端より細菌培養をおこなつた.採取は滅菌鼻用綿棒を用いた.培地には黄色ブ菌選択培地MSEYを用い,検出された黄色ブ菌について,Cogulase Typingによる型別分類と,PC,SMCER,,CM,TC,EMの6種について抗生剤感受性試験を昭和の1濃度<Disk>でおこなつた.
黄色ブ菌以外にMSEY培地に発育可能な菌として,表皮ブ菌,小球菌,Gram(+)N小桿菌について記録した.臨床的には被検者の生活環境特に車の排気ガスとの関係,鼻炎罹患傾向,抗生剤使用の既往,鼻鏡所見を中心に記録した.
結果:1)鼻前庭皮膚と鼻粘膜は表面では黄色ブ菌の生息環境として差を示さず,鼻前庭という解剖学的な位置が黄色ブ菌の検出率を高くしていると考えられた.
2)黄色ブ菌着床は新生児では生後1週から1カ月迄が最高で,その後は2年迄漸減した.また着床した黄色ブ菌も2才迄に次第に消失した.これは母親の保菌をはじめ環境内のブ菌の状態よりも新生児個体の着床条件が関係すると考えられた.
3)永続保菌表でも同一菌株の持続保菌されている場合と,菌株の入れ代る場合があつた.
4)東京地区で検査薄象となつた健康人鼻前庭および鼻腔の黄色ブ菌は,今回の調査期間では抗生剤PC,SM,CER,CM,TC,EMの6種に関する限り殆んど感受性菌であつた.
5)車の排気ガス,鼻炎罹患傾向,鼻汁等と黄色ブ菌着床,保菌とは特に関係はなかつた.

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