日本耳鼻咽喉科学会会報
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聴性脳幹反応による聴力検査のための刺激音立上り時間の選択
鈴木 篤郎堀内 潔子
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1981 年 84 巻 3 号 p. 239-244

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抄録

同一立上り角度を持ち,立上り時間を異にする一連のtone pip(2kHz及び0.5kHz)を使用して,聴力正常成人8名のABRを記録し,刺激音立上りのどの部分までが反応誘発に関与しているかについて検討した.
2kHz tone pipにおいては,刺激音レベル50dB(立上り5msで測定)では,立上り時間5msと0.5msととの間で,反応の平均振幅,平均潜時にほとんど変化なく,反応が刺激音立上りの最初の0.5ms(1周期)の部分で誘発されるものと考えた.
刺激音のレベルを下げて行くと,反応出現率は立上り時間の短いtone pipによるものから減少して行くが,2kHz tone pipでは,立上り1.5msから5msまでの間ではその差はわずかなので,2kHzにおいて反応誘発に関与する主要部分は,立上りのほぼ1.5msまでの部分であると推定した.
0.5kHz tone pipにおいては,立上り3~10ms間の反応出現率にほとんど差が認められず,反応誘発に関与する主要部分は立上りの3msまでの部分であると推定した.
これらの成績からわれわれはABRによる他覚的聴力域値検査に適当なtone pipの立上り時間として,0.5kHz: 3ms, 1kHz: 2ms, 2kHz: 1.5ms, 4kHz:1msという数値を設定した.

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