1993 年 96 巻 6 号 p. 922-930,1047
自発耳音響放射は外有毛細胞由来の現象である. 一方, 遠心性線維であるオリーブ蝸牛束は外有毛細胞を直接支配し抑制的な作用を及ぼすことが従来の報告より知られている. 我々は, これらの事実に基づいてヒトの自発耳音響放射が対側からの音刺激によってどのような変化を受けるかを観察した. その結果, 単発性の自発耳音響放射は対側からのホワイトノイズによって音圧が抑制され, その閾値は40dBSPL程度であった. 今回の抑制閾値が耳小骨筋反射閾値より低いこと, 対側へのcross talkの可能性が無視できること, さらには対側耳の難聴症例では抑制が起こらないことから, 我々の観察した現象は遠心性神経を介したものと推察された.