1996 年 99 巻 1 号 p. 6-12,119
今回我々は, 鼻咽腔腫瘍により睡眠時無呼吸症候群を来したまれな症例を経験したので, ここに報告する.
症例は10歳の男児で主訴は鼾と睡眠時無呼吸発作. 中咽頭に下垂する腫瘤を認め, 終夜モニターにより閉塞型睡眠時無呼吸症候群と診断された (AIII=19.67). 腫瘍の早期摘出の必要性を認め, モニターの7日後に手術を施行. 腫瘍摘出により症状・術後モニター共に著明改善を認めた. 腫瘍は病理組織により鼻咽腔血管線維腫と診断された. 鼻咽腔の腫瘤性病変は, 鼻呼吸障害により睡眠時呼吸障害を来すことが多く, 睡眠時無呼吸症候群の原因として鼻咽腔腫瘍も考慮する必要があると思われた.