1996 年 99 巻 2 号 p. 286-291,347
術前貯血式自己血輸血療法を10名の患者に延べ12回 (1回を1症例とする) 試みた.
対象は男性9名, 女性1名で45歳から70歳, 全員が頭頸部領域の悪性腫瘍患者で, かつ全例に術前照射及び化学療法を施行している. エリスロポエチン及び鉄剤の投与を原則とした. 貯血開始直前のHg濃度13g/dl以上が5例, それ以下が7例であった. 9例は予定量の貯血 (8例に800ml, 1例に1000ml) に成功したが, 残りの3例はそれぞれ発熱, 下痢及び手術日の変更により予定量の半分である400mlにとどまった. 予定通りの手術が施行された10例の平均出血量は898mlであり, 前例が同種血輸血を回避し得た.