2022 年 125 巻 7 号 p. 1062-1066
本稿では頭頸部癌に対して免疫療法を行う際に知っておくべきエッセンスを述べる. 癌治療はエビデンスに則って行うことが重要である. 化学放射線療法に免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) を併用することの有用性を検討した JAVELIN Head and Neck 100 試験 (JHN100) では, 予想に反して全生存期間 (OS), 無増悪生存期間 (PFS) とも ICI の上乗せ効果が認められなかった. JHN100 の結果からも分かるように, 理論や経験に基づいた推測は裏切られることが少なくないためである. 一方, ICI 後の化学療法が OS の延長に寄与することが分かってきた. そして,「PFS2=OS」との考えから, ICI が再発転移頭頸部癌の第一選択となってきている. エビデンスに基づいた ICI 投与では, プラチナ抵抗性・感受性かが重要である. そのため, プラチナ製剤の最終投与後「6カ月経過前」に画像検査を行うことが重要となる. プラチナ抵抗性では CheckMate141 試験結果よりニボルマブが選択肢となる. プラチナ未使用/感受性では KEYNOTE048 試験結果によりペムブロリズマブが中心となる. 東京医科大学では CPS≧20 ではペムブロリズマブ単剤投与, 20>CPS≧1 ではペムブロリズマブとシスプラチン/カルボプラチンと 5-FU の併用投与を行っている. 光免疫療法では抗体ともに癌細胞へ運ばれた水溶性 IR700 が, 690nm の近赤外線と反応し, 非水溶性に変化することで癌細胞の細胞膜を損傷する. 2021年8月の時点で, 頭頸部癌の保険適応は放射線治療などの標準治療が終了し, 切除困難かつ頸動脈などの大血管に浸潤のない症例で, 最大4回まで行うことができる. 適応, 費用対効果などを含め, 解決すべき課題も多いが, 新たな治療選択肢として注目を浴びている. 今や免疫療法は頭頸部癌治療になくてはならない存在であり, その知識と経験は頭頸部外科医にとって必要不可欠なものである.