76 巻 (1983) 3special 号 p. 1003-1011
昭和48年5月当院開設以来, 昭和57年6月までの約9年間に当教室にて入院治療を行なった鼻副鼻腔悪性腫瘍新鮮例37例につき統計的観察を行なった. 当初, 症例数が少なかったため, 長期観察が充分ではないが, 当教室の成績は次のごとくであった.
1) 性差は, 男性25例, 女性12例と男性に多く, 年齢は33歳から85歳までで, 40歳代と60歳代の二峰性の分布であった.
2) 発生部位は, 上顎洞33例, 前頭洞2例, 筋骨洞1例, 鼻腔1例で上顎洞に最も多かった. 病理組織学的には, 扁平上皮癌31例, 悪性黒色腫2例, 腺様嚢胞癌, 粘表皮癌, 線維肉腫, 悪性血管外皮腫各1例であった.
3) 来院時の状況は89.2%が紹介患者で, 耳鼻咽喉科, 眼科, 歯科, 脳外科, 内科より紹介されてきている. 主訴は頬部腫脹, 鼻閉, 鼻出血, 顔面疼痛が多かった.
受診までの期間は6ヵ月以内の例が78.4%であった.
4) 上顎洞悪性腫瘍の進行度は Stage II 1例, Stage III 25例, Stage IV 7例と進行した例が多かった. 進行度と受診までの期間とは一定の傾向を窺うには至らなかった.
5) 予後は粗生存率54.1%, 3年生存率38.9%, 5年生存率37.5%であった. 死囚は腫瘍死が最も多く75%で頭蓋内浸潤による脳死が大半を占めていた. 長期観察例が少なく不充分ではあるが, 治療成績につき多方面より分析を試みると, 年齢では高齢者の, 進行度では Stage IV の予後が不良であった. 受診までの期間は短かい例に長期生存率が高い傾向のように見受けられた. 治療法では, 照射群と非照射群において後者が予後不良であった. 照射+手術群 (非動注群) と三者併用群 (動注群) とでは, 特に差はみられなかった. また, 頚部リンパ節転移と長期生存とは一定の関係を知り得るまでには至らなかった.