2024 年 103 巻 11 号 p. 90-94
セルロースのモデル化合物としてセロビオースを原料とし,水熱条件下(温度:240℃,保持時間:0~240分)における炭化物生成メカニズムについて検討した。処理温度を240℃まで上昇させると,セロビオースの大部分は加水分解によりグルコースに変換されたが,炭化物は生成しなかった。得られたグルコースは,240℃で15分間保持することで5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)に変換された。さらに,保持時間を30分まで延長したところ炭化物の生成が確認された。一方,240℃で保持時間が60分以上の処理条件では,5-HMFは主にレブリン酸とギ酸に分解されていた。しかし,これらの化合物に変換された後,炭化物収率の増加は見られなかった。これらの結果から,グルコースやレブリン酸などの化合物から炭化物が生成するのではなく,5-HMFを経由して炭化物が生成されることが確認された。