日本エネルギー学会誌
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木質ペレットと原料木材のソーダ蒸解特性の違い― バイオリファイナリー原料としての全木ペレット(第2報)―
東内 士郎野中 寛
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2015 年 94 巻 11 号 p. 1350-1354

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抄録

木質ペレットは,木質バイオマスの貯蔵,運搬媒体として広く普及する可能性があり,有望なバイオリファイナリー原料である。しかし造粒工程において,物理的圧密や温度負荷を受けており,化学反応性に変化を生じている可能性がある。本研究では,スギ・ヒノキ間伐材から製造した全木ペレットと造粒直前の原料木材について,針葉樹の酵素糖化前処理として有力なソーダ蒸解特性を比較した。原料木材は造粒工程でさらに粉砕されてペレット化されており,木質ペレットは蒸解初期に容易に構成粒子へと崩壊するものの,ペレットの方が脱リグニン速度は遅かった。一方で,蒸解時間が長いとき,また木材細胞を切断するレベルに微粉化したときには,同等の蒸解挙動を示した。これらにより造粒時の物理的圧密による細胞内腔の圧縮によって蒸解試薬の浸透速度が低下し,脱リグニン速度に影響を与えるものと推測された。木質ペレットは,試薬の浸透がやや遅いものの,試薬への十分な浸漬や微粉化により,原料木材と同様のソーダ蒸解が可能であり,糖化原料として問題なく活用可能であることが確認された。

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© 2015 一般社団法人 日本エネルギー学会
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