2015 年 94 巻 12 号 p. 1378-1386
現在,エネルギーセキュリティーの向上や地球温暖化対策として再生可能エネルギーの普及拡大が世界的に進んでおり,日本においても各種助成措置の下,未利用エネルギーの利用技術の開発が強く求められている。一方,比較的低温の排熱を利用して発電する技術に,代替フロンやアンモニア等の低沸点の物質を作動流体として用いるバイナリー発電技術があるが,これらは主に単一の熱源に対しての利用を想定しているため,温度域の異なる温排水や排ガスが同時に発生する場合は各熱源に対して個別に対応する必要があり,規模が小さいと十分な発電量が得られずコスト面でのメリットが得られにくいという問題があった。そこで,筆者らはアンモニア/ 水を作動流体として用いたカリーナサイクルを基本システムとし,一つのサイクルに温度域の異なる複数熱源に対しての新しいサイクルの適応を検討することとした。サイクル適応の一例として下水汚泥焼却設備より発生する2つの異なる温度域の熱源である温排水(70℃)と排ガス(300℃)への適応を想定したシミュレーションを実施することで,サイクル内の分離器前後の作動流体に直接排ガスの保有熱を与えることにより,従来の温排水を排ガス保有熱で加温したのみのものと比較して,回収可能な出力が約50%増加することを見出した。また,サイクル内に流れる作動流体流量をパラメータとしたシミュレーションを行い,出力が最大となるような最適な作動流体流量が存在することを確認し,さらに,エントロピー生成速度を用いることで各サイクルにおける出力の評価を行うことが可能であることを示した。