日本エネルギー学会誌
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論文
微細藻類バイオマス燃料油利用の産業連関的評価:2つの事業モデルを中心に
中野 諭鷲津 明由
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2016 年 95 巻 1 号 p. 123-138

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抄録

本研究の目的は,産業連関分析を用いて,微細藻類バイオマス燃料油生産システムの建設時と運転時における経済および環境面への波及効果を計算することである。われわれは2 種類の生産システムを比較した。一つは国内の休耕田を活用した簡易フォトバイオリアクター(PBR)による小規模施設であり,もう一つは比較的日照時間の長い海外で広い開放池を用いる大規模施設である。小規模施設建設時の経済的誘発の大部分は,PBR に必要なプラスティック原材料の生産から誘発されている。海外の大規模施設を建設するときには,土木工事と水にかかる費用が極めて高い。施設運転時の誘発効果の大部分は電力コストによる。微細藻類の成長率や脂質含有率の違いに対するプラントの採算性について,感度分析を行った。採算性の改善には,微細藻類の脂質生産性の改善と残渣の肥料や飼料への高付加価値化が必要である。しかし残渣の高付加価値化は,残渣を付加価値の低い固形燃料として利用する場合に比べて,CO2誘発が大きいという結果になる。

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© 2016 一般社団法人 日本エネルギー学会
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