日本エネルギー学会誌
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論文
産業連関モデルを用いたタイにおけるガソホール促進政策の事後的な評価
森泉 由恵
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2016 年 95 巻 5 号 p. 448-456

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抄録

タイ政府は,ガソリンの代替燃料としてのガソホールの利用促進を目的として,2003年から様々な政策を実施してきた。本研究の目的は,タイでこれまでに行われたガソホール推進政策について,社会経済および環境の観点から評価することである。ガソホール政策分析用に改良した産業連関モデルを用いて,ガソホールの普及拡大がもたらす影響を,国内歩留まり率の変化,GHG排出量の変化,雇用者所得の変化という3 つの視点から評価した。新たなモデルは,タイの2005年産業連関表をベースとし,既存部門を分割するとともにガソホール生産に関連する部門を新設することで作成した。分析結果から,以下の知見が得られた。第一に,ガソホールの利用拡大は,生産波及効果の国内歩留まり率を高め,国内産業の発展に寄与する可能性をもつ。第二に,ガソホールの導入は,ガソリン消費量を削減することにより,国全体のGHG排出量削減に貢献する。一方で,ガソホール製造にともなうGHG排出量は無視できないほどに大きい点にも留意する必要がある。

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© 2016 一般社団法人 日本エネルギー学会
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