日本エネルギー学会誌
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論文
取水等設備を含む個別最適化による海洋温度差発電コストの低減と評価
迯目 英正小島 紀徳伊藤 拓哉鈴木 誠一
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2016 年 95 巻 8 号 p. 653-662

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抄録

海洋温度差発電(OTEC)は,再生可能エネルギーの中でも資源量が多く,気象の影響を受けず24 時間発電可能なことから,実用化が広く期待されている。しかしOTEC の発電コストは高く,中でも取水コストが大きな割合を占める。本稿では,既に報告されている久米島でのOTEC 実証計画書を基に,取水を含めた設定条件を最適化した場合の発電コストを試算,評価した。久米島実証計画の1,250 kW規模での発電コスト120.5円/kWh(取水施設を内部化,助成なし)に対して,取水施設の最適化により,50.5円/kWh,さらにリスク対応として設置されている取水管2条を統合することで43.4円/kWhとなる。新たな技術開発を仮定しなくとも,諸設定の最適化で,離島の小規模ディーゼル発電と十分価格競争が可能である。OTECの本格的普及には,発電コストの更なる低減を要するが,表層水水温の制約の下,現状の取水技術,発電装置技術では限界があり,スケールメリットや高温側熱源補助装置の形態,効果について検討する必要がある。

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© 2016 一般社団法人 日本エネルギー学会
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