本研究の目的は,産業連関表(IO: Input-Output table)を用いて,エネルギー技術導入による社会経済影響を,県内,県外,国外を区別して推計する汎用性の高い方法を議論することである。差分IOモデルと2地域間IOモデルは,公表されている地域IOと全国IOから作成されており,どちらのモデルも2つの地域の産業構造を反映しながら3地域の社会経済影響を区分して分析することができる。この二つのモデルの比較分析は,山梨県を事例として,エネルギー技術の製造,建設,維持管理段階に強く関連する部門を対象とした。その結果,建設,維持管理段階では推計結果に大きな差は見られなかったが,製造段階では2地域間IOモデルの方が差分IOモデルよりもやや大きい影響を示した。これは2地域間IOモデルが,はね返り需要を考慮することができ,その効果は他の産業よりも製造業の方が大きいためである。その一方で,差分IOモデルは,はね返り需要を考慮できないが,2地域間IOモデルよりも各地域の産業構造の差を簡単に考慮できる点から,社会経済影響の大枠を捉えるために有効である。