2017 年 96 巻 8 号 p. 285-289
酸素と水蒸気をガス化剤として用いる部分燃焼ガス化技術および水蒸気のみをガス化剤として用いる新たな高カロリーガス化によるガス化技術は,種々のバイオマス原料を900-1,000℃で完全にガス化し,煤やタールを極度に減じることができる技術の構築を目指して開発した。この技術の出口は,エンジン・タービンによる発電のほか,生成ガスが優れた組成の混合ガスであることからZn/Cu触媒を用いた化学合成によって液体バイオ燃料の製造が可能である。最初に開発した試作機「農林グリーン1号機」は2002年4月18日,さらに高カロリーガス化技術による「農林バイオマス3号機」は2004年に建設され稼働を開始した。2011年に農林水産省の補助により,廃材を利用したガス化,バイオメタノール生産(目標100リットル/時)が可能な大規模実用機が長崎市に建設され,技術実証に成功した。これらの大気を用いずに酸素や水蒸気のみをガス化剤として用いる本ガス化法の技術と試作機および生成ガスの特性について詳細に記述するとともに,従来の大気を用いたガス化技術との比較を行った。さらに,開発したガス化技術の利用の現状を鑑み,実用機の普及に向けた展望を議論した。