日本エネルギー学会機関誌えねるみくす
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学会賞(技術部門)
高炉用新塊成物の開発による省エネルギーへの貢献
樋口 謙一
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2021 年 100 巻 4 号 p. 397-402

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抄録

鉄鋼業は日本のCO2排出量の15%を占めている。その中でも,石炭を原料とする製銑工程は,その過半を占めており,地球温暖化抑制への貢献の期待は大きい。製銑での省CO2,省エネルギー手段として,高炉の還元材比低減が有効である。そこで,高炉の還元平衡制約の回避効果に着目した新塊成物による還元材比低減を検討し,その基本原理を見出した。まず,微粉炭材と微粉酸化鉄を混合することで,高炉内で酸化鉄のガス還元反応とカーボンのガス化反応のカップリング現象が発現し,カーボン反応性が向上する。そして,カーボン反応性が向上することで,高炉の熱保存帯が低温化して,反応効率が向上する。この2つの基本原理に基づき,微粉炭材と微粉酸化鉄から構成される含炭塊成鉱,RCA(Reactive Coke Agglomerate)を開発し,実用化した。開発に際しては,製造上の課題に対して,含炭塊成鉱の成分設計,含有カーボン量の最適化,蒸気養生による製造効率化,の3つの技術開発ポイントに注力した。本技術は,実機使用評価試験と実機測定データによる原理確認を経て,当社の3製鉄所,高炉6基に順次適用され,高炉の還元材比低減を通じた省エネルギーに貢献している。

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