抄録
夜間魚群は上下二水深間を緩かに移動しつゝあり, 偶々或程度の明さを有する位置に達して初めて光に誘導せられて燈下に集るに至る。燈下に於ける集魚の形状は主として燈の光度曲線により, その大小は海水の清濁と光度の強弱とによる。集魚の外縁に於ける照明は略一定なり, 從つて燈直下に吊せし透明度板の水面上より認め得る最大の深さ髪以と集魚の大小の目安となすことを得。この深さをろ燈直下に於ける集魚の下限の深さをD, 集魚の量をνとすれば大體に於てD∞z2, v∞z3。集魚は燈を通る鉛直線を廻りて群游し, 燈光が急激に變化するときは忽ち集魚は散逸す。このことなくも數時間後には燈を離れて去るを常とす。現在我國に於て使用される集魚燈は主として石油バーナーにして, その光度は750乃至1, 100燭, 1時間當り石油消費量は3乃至5升なり。集魚は數種の旋網によりて漁獲せらる。現在困憊を極むる篝火漁業の發展は一に, より經濟的にして, より合理的なる集魚燈の完成にかゝる。合理的なる集魚燈とは光が安定にして, 集魚に漁獲し易き形状を與ふる如き光度曲線を有するものなり。