1993 年 57 巻 5 号 p. 97-102
大分県湯布院町は1960年代の九州横断道路開設を契機に, ひなびた寒村から著名な温泉リゾートへと劇的に発展したが, 際立った魅力の中心は, その優れた農村らしい景観にある。この景観は, その時々の景観をめぐる争点に対する対処を通して次第に形成されるものであり, 人為的な行為の結果である。本研究は, 60年代から現在に至る間, 当町で発生した景観をめぐる出来事を各種資料を収集分析することを通して, その争点が自然景観から産業景観へ, そして生活景観へと移行してきたプロセスを実証するとともに, それから生み出された施策や活動が時代の価値観や社会的状況を如実に反映したものであることを明らかにする。