戦前の東京市に指定された風致地区では, 地元住民の組織する風致協会の活躍が良好な風致の維持に寄与したとされているが, 風致協会の具体的な活動とその成果は明確にされていない。そこで, 風致保全と開発の調和を目指し, 風致地区の指定目的にあげている近郊行楽地としての整備や良好な住宅地の形成に, 協会はその活動を通してどのようなかかわりを持ったのか検証した。その結果, 前者は近郊行楽地として便益施設等の整備によって, レクリエーション利用の促進を図り, それが将来の公園化につながった。後者では, 風致地区にふさわしい緑豊かな住宅地の形成を導くような積極的な活動はみられず, 一般住宅地と大差のない市街化を許してしまった。