都市オープンスペースは, 予測不能ともいえる多種多様で雑多な出来事や存在を想定せざるを得ず, 社会的な諸関係が現象し可視化される。中でも, 野宿者問題は大きな社会問題となっている。本稿では, 1910年代の都市空間における「浮浪者」を問題化する新たな枠組みの設定と,「浮浪者」という呼び名に劣位の標識が付与される「知」の蓄積過程を検証した。さらに, 近代化を進める中で「浮浪」問題をどのように回収し, 社会的諸関係の再編に対してどのような実践を促したのかの一端を「職工定住化」問題に見た。そこでは, 警察の取締, もしくは収容の対象でしかなかった「浮浪者」が労働規律の観点から問題視され, 1918年以降は教化の対象となり, さらに, 日本資本主義の展開を担う新しいあるべき存在を創出する方法が提起されていたのである。