本研究は, 植生の違いによるセミ類の種構成の差異を明らかにし, 多様な生物の保全に配慮した緑地計画の策定に寄与することを目的としたものである。神奈川県大磯町の標高約160mの丘陵地を対象地とし, 各種の林の中に調査ルートを設定し, セミの羽化時期の間, ほぼ1週間ごとに羽化殻を採集し, 種及び雌雄の判別を行った。採集場所の樹林の種別, 林床の明るさ, 土壌硬度.土壌水分等の環境条件を調査し, セミの種構成との関係を分析した。採集された1363個の羽化殻を同定したところ, 5種に分類され, ニイニイゼミ, ミンミンゼミは落葉樹林に多く, アブラゼミ.ヒグラシは常緑樹林に多いなど羽化場所の特性が明らかになった。