1997 年 61 巻 5 号 p. 589-592
本研究は, 大阪府能勢町における水田中心の農業・農村空間の生物相保全機能と景観保全機能を評価し, 両評価結果と土地利用特性と地形特性で表される空間特性並びに基盤整備事業の経過年数との関係を探った. その結果, 未整備の棚田地区は景観的価値が最も高い上に帰化植物の侵入率が低く植生の多様度も最も高い結果となった. 一方, 棚田地区で基盤整備が行われた地区では長大法面が発生し景観面に大きな負の影響を与えると共に法面への帰化植物の侵入も多く見られた. 緩傾斜地区では, 基盤整備の整備年代に拘わらず景観的価値はやや高いものの, 整備年代が新しくなるに従って帰化植物の侵入率が高くなり在来種の保全機能が低下する傾向にあった.