平成11年5月10日に, 長野県更埴市に所在する顕著な棚田 (千枚田) が「姨捨 (田毎の月)」として国の名勝に指定された。本研究では.「姨捨 (田毎の月)」の棚田がもつ文化的価値の分析を行い, それらの保存を目的として行われた名勝指定の在り方について検証することを目的とする。その結果, 姨石を中心とする棚田地域-帯が文化的な価値をもつ景観であり.それらの保全のためには, 地元保存会に見られる就労年齢の高齢化等の問題に対し, 担当部局を越えて対処する必要のあることが明らかとなった。また, この指定の意義は, 農林水産業に関連する文化的景観の価値を広く認識し, それらの総合的な保全の契機となることにあるといえる。