日本経営工学会論文誌
Online ISSN : 2187-9079
Print ISSN : 1342-2618
ISSN-L : 1342-2618
原著論文(理論・技術)
多人数ワークショップのための意見集約支援システムCollagreeの試作と評価実験
~議論プロセスの弱い構造化による意見集約支援~
伊藤 孝行奥村 命伊藤 孝紀秀島 栄三
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 66 巻 2 号 p. 83-108

詳細
抄録

近年,TwitterやFacebookに代表されるユーザが意見を共有する場を提供するシステムが広く使われている.しかし,既存のシステムでは,多くの人が意見を発信し,共有することは可能だが,意見の集約を支援する仕組みは実現されていない.特に,都市計画,及び公共事業等の分野において,オープンな環境で,数百人レベルの多人数の意見集約システムの実現に期待が高まっている.なぜなら,市民からの直接的な意見を集めるために,現状では,地域ごとのワークショップ(集会)という方法がよく使われるが,地理的・時間的制約のために,数人~数十人などの少人数の意見しか集めることができないためである.さらに地域ごとのワークショップは時間も金銭的コストもかかってしまう.少人数の専門家のみでのワークショップも行われるが,一部の専門家による決定は住民の納得を得られない場合が多いという問題がある.そこで,現在,インターネットを使って大規模な人数の,意見の発散(共有),収束,及び集約といった一連の議論プロセスを支援できる大規模意見集約システムが求められている.大規模意見集約システムは,誰でも気軽に参加でき,意見を発信し,議論を行う開かれた場を提供するべきである.そこで,本論文では,多人数の意見集約支援システムCollagreeを試作する.Collagreeでは,参加者の自由な発言を重要視している.なぜなら,ブレインストーミングに代表されるように,自由な発言によって,斬新なアイデアや問題提起が創発されることがあるからである.そこで,基本的なインターフェースの構造は,インターネット上の掲示板にあるように,参加者がなるべく自由に意見を投稿できる形にしている.ただし,一般的な掲示板のように単に意見を投稿できるだけにしておくと,議論が発散し炎上してしまうことが多い.WikipediaやLinuxというオープンプロジェクトは,集合知という観点からは,大規模な集団を良い方向に進ませ,かつ誤った方向に進ませないために,極めて限定的な階層や管理という概念を導入している.そこで,本研究では「弱い構造化」に基づく議論を提案し,Collagreeに応用する.「弱い構造化」に基づく議論では,大規模な人数の参加者による議論を整理し,良い方向に向かわせるために,議論を「ある程度」管理するためにファシリテータを導入し,以下のファシリテータ支援機能群によって支援する.(1)Twitterライクなコメント投稿機能(発散支援),(2)コメントの賛成/反対の自動判定機能(収束支援),(3)論点(タグ)情報付与機能(収束支援),(4)注目キーワード提示機能(収束支援),(5)ファシリテーションフレーズの簡易投稿機能(集約支援),(6)投稿履歴(全体の履歴と自身の履歴)・リマインダー機能(議論進行支援),及び(7)情報提示機能(議論進行支援).本論文では,Collagreeによって,一般市民が興味を持ちやすい名古屋の観光活性化をテーマに行った評価者実験の概要とその結果を示し,本システムの有効性を示す.

著者関連情報
© 2015 公益社団法人 日本経営工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top