マリンエンジニアリング
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自律型海中ロボット“r2D4”による中央インド洋海嶺地溝帯への潜航
浦 環永橋 賢司
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2008 年 43 巻 4 号 p. 518-522

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抄録

自律型海中ロボット (Autonomous Underwater Vehicle: 以下AUVと呼ぶ) “r2D4” (アールツーディーフォ) は長距離航行型AUVであり, 重量1, 600kg, 全長4.4mで2003年に建造された.観測装置として, サイドスキャンソーナー及びインターフェロメトリソーナー, CTDO, またマンガン濃度を計測する為に現地型化学分析装置GAMOSを装備している.これまで我々は佐渡島 (2003) や黒島海丘 (2003) , 海底火山の北西ロタ (2004) , 海底クレータである明神礁 (2005) などで運用し, 厳しい環境下におけるその自律性と信頼1生の高さを示してきた.2006年12月における白鳳丸航海 (KH06-4 Leg3) では, 中央インド洋海嶺地溝帯のセグメント15及びセグメント16においてr2D4の運用を行った.まず, 始めにr2D4は北緯19度34分, 東経65度51分におけるRoger Plateau (仮名) の調査を行った.ここでは3回潜航行い, いくつかのマンガン濃度の異常を検出したが, これらの発生源を特定するには至らなかった.次に, セグメント16の中央に位置する狭い渓谷での調査を行った.地磁気計のキャリブレーションを行った後, AUVは崖を飛び降り, 深度2, 700mの渓谷の底に辿り着いた.r2D4は渓谷の底に沿って平均3.3ノットで約6時間潜航を行い, およそ25km2におけるサイドスキャンイメージを取得した.サイドスキャンイメージからそこにおよそ26kmの長さで平均2.7kmの幅を持つ, 総面積約70km2の溶岩大平原が存在している事が分かった.平原地帯の北部には小さな岩山があり, その上空を通過した時にマンガン濃度と濁度の顕著な異常が検出された.続いて行われたTow-yoによる調査をもとに, この場所で熱水活動が起こっているという結論に達した.以上の結果から, 事前に綿密なAUV航路計画を行う事で, 航行型AUVは複雑な地形形状をもつ中央海嶺においても強力な調査ツールになりうるという結論に達した.

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© 社団法人 日本マリンエンジニアリング学会
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