Journal of the Japan Institute of Metals and Materials
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Degradation Mechanism of Stucco Use in Stone Chamber of Takamatsuzuka Tumulus
Masahiro Kitada Yohsei KohzumaMari SakaueToru Tateishi
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2018 Volume 82 Issue 8 Pages 319-325

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抄録

The Takamatsuzuka tumulus was constructed in the 7-8th centuries at Asuka in the current Nara Prefecture. The mural is painted on the stucco plastered over the tuff wall. The stucco is apparently rough due to degradation, and therefore, the mural surface is also rough. The purpose of this research is to clarify the causative factor of the degradation observed in the stucco materials scientifically. Surface and inner morphology of the stucco are observed using a computerized X-ray tomograph (CT), a scanning electron microscope, and a transmission electron microscope. Impurity elements are analyzed by means of energy dispersive X-ray spectroscopy. Many tunnel-like voids are observed in the stucco. Two-dimensional macroscopic-void areas observed by CT account for approximately 15 percent of the total area. Furthermore, a great many voids in micrometer-size are observed. Numerous small CaCO3 crystals grow from the tunnel wall, and impurity content of the grown crystal is lower than that of the stucco matrix. This shows that the grown crystal is purified in the process of recrystallization. It is thought that the tunnel is formed by the dissolution of stucco constituents into water during the wet season. Then the small crystals grow by recrystallization from water containing stucco constituents during the dry season.

1. 緒言

国宝である高松塚古墳の壁画は7世紀末から8世紀初頭に描かれたわが国最古級の本格的な絵画であり,その美術的価値は極めて高い.しかし,製作されて以来,土中の高湿度環境下で長い年月を経たため,全体的に劣化が激しく,修復が進められている.これらの概要の一部については,最近,報告書にまとめられた1.有形文化財は時間の経過とともに物質的変化を生ずるが,良好な保存をするためには劣化を最小限にすることが重要である.それには,使われている顔料,表面の汚れ,内部の劣化の状態などの多くの材料科学的な知識が必要である.これらの知識によって,将来,現在より高度な保存技術および修復技術の開発が期待できる.これまで,高松塚古墳に使われた顔料2,3,4,5,表面の茶色の汚れ6,漆喰上の白鉛鉱(PbCO37,8などの微細構造を明らかにした.壁画の劣化は顔料の剥離による落下,黴による劣化,土壌に由来する物質による変色など多くの現象が絡んでおり,非常に複雑である.壁画は漆喰地の上に描かれているが,漆喰表面には窪み,裂け目などからなる空隙が観察され,形状的に粗な表面状態になっている1,9.壁画を健全に保存するためには,基盤となっている漆喰の内部構造を知ることも非常に重要である.

本研究の目的は劣化した漆喰内部の微細構造と生成機構を知ることであり,本報では,目地漆喰の内部の微細構造をX線トモグラフィおよび 電子顕微鏡などで観察した結果について述べる.

2. 実験方法

実験に用いた試料は壁画の基盤となる石材を繋いでいる目地漆喰で,平成16(2004)年に石室を解体して壁画を保存したときに採取されたものである.これは奈良文化財研究所に保存されている漆喰で,国宝指定外の試料である.

漆喰を構成する化合物の同定にはX線回折装置(RIGAKU: MinFlex600, CuKα, 40 kV-36 mA),漆喰内部の観察にはX線CT装置(X-ray computerized tomography: Rigaku R-cmT, 90 kV-177 μA)を用いた.走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope; SEM, Hitachi SU3500)観察では,試料が絶縁物であるために高真空であるとチャージアップして画像の観察が出来ないので,30 Paの低真空下で行った.電圧は 10-15 kVである.また,漆喰などの成分の検出にはエネルギー分散X線分光(Energy dispersive X-ray spectroscopy; EDS, EMAX50)を用いた.透過電子顕微鏡(Transmission electron microscope; TEM, H-9500, HF-2000, 200 kV)観察では,漆喰が多孔質であるため,市販のシアノアクリレート接着剤で固定し,フォーカスドイオンビーム装置(Ethos NX5000 )で薄膜にした.

3. 実験結果と考察

3.1 表面の形状

漆喰の表面の多くには茶色の汚染層6のほか黴9などが付着している.これらが存在しない漆喰の表面をSEMで観察した.表面は種々の形状を示すが,代表的な表面形状をFig. 1 に示す.(a)は表面が比較的平坦であるが多角形状の溝あるいは亀裂とみられる像からなる表面であり,(b)は微細な突起があって局部的に浸食されたような鋭い凹凸からなり,細長い深い溝が観察される.これらの溝は内部に続いているように見受けられる.

Fig. 1

Scanning electron micrographs of typical stucco surfaces.

漆喰表面は上記のような表面形状を示しているが,形状によって物質的な差があるか否かをX線回折で調べた.その結果,表面状態は異なっていても,X線回折像はFig. 2 のように,漆喰の主成分である炭酸カルシウム{方解石(calcite: CaCO3)}10のピークが強く,そのほかに方解石と多形をなす斜方晶系のあられ石(aragonite: CaCO311および低温型石英(αSiO212のごく弱いピークが検出された.したがって,表面状態の差は腐蝕などの条件とその過程などが異なるものと推定される.あられ石は熱水鉱床の鉱物および貝殻などに含まれるが,準安定で長時間を経ると方解石に転移することが知られている.漆喰は石灰岩を焼いて作った生石灰(CaO)に水を加えて消石灰{Ca(OH)2)}とし,大気中に曝してCO2を吸収させて方解石型CaCO3としたものであるから,高圧で安定なあられ石構造のCaCO3は通常存在しない.ただし,伝統的技術として,漆喰の強度増大のために砂や繊維(スサ)などが添加されることが多く,霰石構造の貝殻粉がSiO2などとともに添加された可能性がある.

Fig. 2

Typical X-ray diffraction pattern of the joint stucco.

これらの表面の代表的なEDS像をFig. 3 に示す.主成分のCa, CおよびOは上述の方解石型CaCO3の成分であり,Siは主にX線回折で検出されたαSiO2によるものと考えられる.このほか,微量のAlおよびMgが検出され,原料とした石灰石などの不純物とみられる.

Fig. 3

Energy dispersive X-ray spectroscopic pattern of the joint stucco.

3.2 漆喰破面および内部のマクロ構造

漆喰の表面は上述のような複雑な形状であるが,表面から内部の構造を推定することが難しい.そのため,漆喰試料を割り,比較的平坦な破面を選んで内部構造を観察した.漆喰試料破面の代表的な低倍率SEM像をFig. 4 に示す.破面には暗い線状の像が観察され,その向きは特定していない.線状部の幅の広いものは約 0.1 mm,狭いものは 0.01 mm以下で,長さは 1-2 mm程度である.線状部は他の線状部と繋がっているものもある.これらの暗い線状部は破面から内部に向かって窪んだ溝のような状態になっている.

Fig. 4

Cross-sectional scanning electron macrograph of the fracture surface of the joint stucco.

この漆喰破面の窪んだ部分の漆喰内部における状態を立体的に把握するため,X線CTで観察した.その一例をFig. 5 に示す.このCT像の明暗はX線透過量の差によって生じ,暗い領域はX線透過量が多く,空間の物質充填密度が相対的に低いことを示し,明るい領域は密度が相対的に高い.Fig. 5 のAとBは漆喰内部で互いに直交する面のCT像であり,矢印で直交する位置を示す.ここで,図の上部に観察面AとBの位置関係を模型的に示す.AはFig. 4 で観察した破面(fracture surface)と垂直な面で暴露面(exposed face)および底面(bottom face)に平行な面であり,BはFig. 4 の破面と平行な面である.CT像によれば,漆喰の内部でも漆喰の密度が低い線状の像が観察される.これらの暗い領域は立体的に繋がっているトンネル状の空洞とみなされ,Fig. 4 に示した破面の暗い部分は漆喰内部に広がっている.CTの分解能はSEMより低いが大きなトンネルは明瞭であり,CT像には小さなトンネルも多数観察される.漆喰の断面に占める空洞とみなされる領域の2次元割合をCT像の分解能の範囲で計算すると,見かけで約15%である.漆喰が粗な状態になっているのは,このようなトンネル状の空洞が多数生じているのが主因である.後述するが,これらのトンネルの成因のひとつは漆喰中に浸透した水による作用と推定される.また,線状にみえるトンネル以外にも平面状の暗い領域があり,全体的に漆喰の充填密度にばらつきがみられる.CT像は分解能が低いマクロなスケールであり,微細な構造は把握できないが,微細なトンネルあるいは微細な空洞などが局部的に存在することによって漆喰の密度にばらつきがあるものと推定される.

Fig. 5

X-ray computerized tomographs of the joint stucco and schematic representation of observed inside cross-sections. Dark areas are tunnel like voids in the stucco. Arrows indicate the orthogonal base-line position.

前述のように,一般の漆喰には「スサ」と呼ばれる植物繊維が強度増大のために混ぜられている.このような繊維強化は住宅の壁や塀の土壁などでも広く使われてきた.有機質の物質は土中および水中などの酸素が不足している環境では炭化することがある13,14.しかし,この漆喰試料では炭化した線状の像は観察されなかった.一方,有機物が酸化して分解消滅すれば空洞となるので,トンネル生成の一因になると考えられ,キトラ古墳の漆喰ではスサの痕跡と推定される空洞像が観察されている15.ただし,現在まで高松塚の漆喰試料にスサに相当する寸法の空洞は確認されていない.したがって,トンネルの要因としてのスサの影響は 今後の検討課題である.

3.3 空洞の微細構造

漆喰の破断面における代表的なトンネル状空洞の高倍率のSEM像をFig. 6 に示す.低倍率SEM像とおよびCTで観察されたトンネルとその周辺の平坦な領域からなる.矩形はFig. 7 で述べる領域である.Fig. 4 および 5 で示したマクロ像では大きなトンネル状の空洞が観察されたが,倍率の高いSEM像で観察すると,長径が 10-100 μmの微小なトンネル状空洞も多数存在する.Fig. 6 の最も暗い部分は試料面に対して垂直に近い方向のトンネルとみられ,比較的明るい横長のものはトンネルの横断面に近い像である.破面におけるトンネル状空洞の位置と向きは無秩序である.マクロなCT像でみられたトンネル以外の領域における明暗の一因は,上述のような微細な空洞の分布ばらつきよるものとみられる.トンネル以外の比較的平坦な領域でも微細な粒状となっており,緻密な破面ではない.

Fig. 6

Magnified scanning electron micrograph of the fractured surface of the stucco. Square indicates the area observed shown in Fig. 7.

Fig. 7

Scanning electron micrograph of the square area shown in Fig. 6.

前図(Fig. 6)の矩形で示したトンネル状空洞を部分的に拡大したSEM像をFig. 7 に示す.図に見られる空洞の長さ方向は試料面にほぼ平行で,空洞の内壁が観察される.トンネルの内壁にはトンネル以外の平坦な破面に比較して大きな結晶が観察される.柱状結晶の長軸は 3-10 μmであるが,周囲には 1-2 μmの粒状の結晶が多数存在する.結晶の向きは無秩序である.Fig. 7 の結晶が存在する領域のEDS像をFig. 8 に示す.主成分はCa,CおよびOであり,これらの結晶は方解石型のCaCO3である.Fig. 3 で示した漆喰の広い領域おけるEDS像に比較すると,Mg,Al およびSiの量が相対的に少なくなっている.

Fig. 8

Energy dispersive X-ray spectroscopic pattern of the area shown in Fig. 7.

トンネル状空洞を断面方向から観察すると,Fig. 9 で示すように,トンネルの中央に向かってトンネルの壁面から多数の結晶が成長している.Fig. 7 で示した結晶も同様な機構で再結晶したものとみられる.形状は柱状,板状および針状など様々であるが,1辺が 10 μm以下の微小なものから 150 μm程度の大きなものまで多様である.結晶の先端部は多角形状になっており,成長時の晶癖が現れている.大きな結晶は時間をかけて成長したものと推定され,成長の際に生じたとみられるステップが結晶表面に観察される.矢印の微小な針状の結晶は大きな結晶の段差部付近から成長しており,その他の場所でも多数の微細な針状結晶が観察される.これらの場所では結晶核が多数生じたものとみられる.大きな結晶の上から小さな結晶が成長していることから,結晶成長は間歇的に何回かにわたって生じている.Fig. 9 で示した領域の元素分布像をFig. 10 に示す.これらの分布像は見やすくするために明るさとコントラストを個々に調整している.試料は平坦でないので,信号は一様ではない.Oの分布像中のAで示す暗い領域は試料面が窪んでいるため信号が極めて弱い領域で,他の元素像でも信号が弱い領域になっている.トンネル状空洞内の結晶が存在する領域では相対的にCaおよびCに富むが,周囲の領域は空洞内結晶よりSi,Alなどが相対的に多く含まれている.

Fig. 9

Scanning electron micrograph of crystals grown from tunnel wall in the stucco.

Fig. 10

Elemental maps of the tunnel area of the stucco shown in Fig. 9. Letter A indicates weak-signal area.

再結晶粒と周囲の地の元素分布を比較した代表的なEDS像をFig. 11 に示す.(a)はFig. 9 の上部にみられる大きな再結晶粒のEDS像で,(b)はFig. 9 の左側の再結晶粒がみられないマトリックス領域のEDS像である.EDSで測定された結晶とマトリックス中のCa以外の不純物の含有量を比較すると,SiおよびAlの差が大きい.測定領域が平坦ではないので厳密な比較はできないが,EDSで測定された分析値を比較すると,結晶ではSiが0.57 mol%,Alが0.19 mol%であるのに対して,周囲のマトリックスではSiが1.6 mol%,Alが0.8 mol%である.このように,再結晶粒より周囲のマトリックスの不純物量が多いのは,方解石型CaCO3の結晶成長時に不純物の混入が抑制されて,結晶の純度が高くなったためと推定される.一般に,溶液および融液からの単結晶の成長などでは不純物の低減することが知られているが,漆喰中の方解石型CaCO3の再結晶でも同様な現象が起こっているものと考えられる.この結果はFig. 8 で述べた結果と一致する.

Fig. 11

Energy dispersive X-ray spectroscopic patterns of (a) grown crystal and (b) neighboring stucco matrix shown in Fig. 9.

一方,Fig. 6 で示したトンネル領域以外の比較的平坦な粒状の領域はFig. 12 で示すように非常に微細な凹凸のある状態になっており,1 μm以下の微小な粒子像なっている.ただし,矢印で示すように,1-3 μm程度の孔とみなされる暗い像が観察され,これらは微小な空洞と考えられる.

Fig. 12

Scanning electron micrograph of a flat area shown in Fig. 6. Arrow indicates an example of small cavity.

破面近くの漆喰は破損して本来の構造とは異なると考えられるので,シアノアクリレート系接着剤を浸潤させて固定した後,表面を研磨して内部の領域から試料を採取してTEMで観察した.Fig. 13 に代表的なTEM像を,Fig. 14 にはFig. 13 の領域における元素分布像を示す.微細粒子も粗大粒子もCaおよびOを含んでいる.Cを含む接着剤で固定しているのでCの分布像は得られなかった.Aで示した結晶はFig. 15 の電子線回折像で示すように方解石型CaCO3結晶であり,微細な結晶も方解石型CaCO3である.Fig. 13 ではAで示す長径約 0.8 μmの比較的大きな結晶があり,そのほかに 50-200 nmの微細な粒子が連なり,結晶の存在しない空間が大きく広がっている.CT像で述べたように,トンネルのない領域にも粗な状態の領域が存在しているので,漆喰は全体的に見掛けの密度が低い状態である.50-200 nmの微細な粒子が再結晶する前の方解石型CaCO3粒子の大きさで,Aで示した比較的大きな結晶は再結晶したものとみられる.漆喰は,通常,消石灰{Ca(OH)2}粉末に繊維,膠着材のフノリなどを添加して水で練ったものであるから,乾燥した後に空洞が生ずる.したがって,トンネル以外の微細な空洞には漆喰製造の初期から存在したものもあると考えられる.

Fig. 13

Transmission electron micrograph of the joint stucco. Letter A indicates the recrystallized grain.

Fig. 14

Elemental maps of Ca and O of stucco grains shown in Fig. 13.

Fig. 15

Electron diffraction pattern of grain A shown in Fig. 13.

前述のように,トンネルの生成には目地漆喰に浸透した水が関与し,結晶の成長にも浸透した水が関係している.方解石型 CaCO3は炭酸水(水に溶けて生ずるH2CO3)などの酸性の水に徐々に溶けることが知られており,CaCO3 + H2CO3 → Ca(HCO32 の反応が起こる.この反応で生じた炭酸水素カルシウム{Ca(HCO32}は水に溶解するので,浸透した水は漆喰の主成分である方解石型CaCO3を溶かして小空洞をつくる.方解石型CaCO3の溶解が進むと小空洞は水路(みずみち)のように拡大し,これらは前述のトンネルになる.トンネルの生成は水に溶解した漆喰の一部がそのまま漆喰の外に流失したことも示している.上記の反応であれば,雰囲気中あるいはトンネル内のCO2濃度も反応に影響すると思われるが,詳細は不明である.わが国では熱帯地方などのような明確な雨季・乾季はないが,季節的な乾湿はある.このような時に古墳内部に浸透したコロイド状の粘土微粒子を含む雨水が古墳の石室内部まで達すれば,漆喰および壁画表面に流れて絵を汚染する6.コロイド状の粘土微粒子は漆喰表面に沈着して雨水は濾過された状態になるが,この雨水は漆喰表面だけではなく,漆喰内部にも浸透する.壁画面下の漆喰と目地漆喰の環境条件は若干異なると思われるので目地漆喰に限った考察であるが,乾燥すると水分が減少して,水に溶解していた炭酸水素カルシウムは溶解度限以上となり,水が存在していたトンネルの壁の漆喰を結晶核として,Fig. 7 およびFig. 9 で示したような方解石型CaCO3結晶に成長したものと推定される.乾湿を伴う環境条件は気候的に短期および長期に繰り返されるので,漆喰中のトンネルは徐々に拡大し,それに伴って方解石型CaCO3の結晶成長と新たな結晶が生成し,これらの現象が繰り返されてトンネルが拡大したものと考えられる.

4. まとめ

高松塚古墳に使われた目地漆喰の内部構造を調べ,劣化の原因について検討した.漆喰中には多数のトンネル状の空洞があり,これらは浸透した雨水によって漆喰の成分である方解石型CaCO3が溶かされて生じた水路と考えられる.トンネルの壁からは多数の微細な方解石型CaCO3の結晶が成長しており,雨水に溶けた漆喰成分が再結晶したものである.長時間にわたって漆喰の溶解と再結晶が繰り返され,空洞は次第に広がったものとみられる.漆喰が粗になっているのは,このようにして生成したトンネル状の空洞が主因である.

謝辞

本研究にあたって,X線回折およびX線CTに協力して戴いた(株)リガクの土性明秀氏ならびに濱中功氏に感謝する.

引用文献
 
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