Journal of the Japan Institute of Metals and Materials
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Special Issue on Hydrogen and Materials Characteristic in Solids IV
Influences of Carbon Addition on Mechanical Properties and Hydrogen Evolution of Thixomolded AM60B and AZ91D Magnesium Alloys
Yoshiaki HashimotoMakoto HinoTakehiko YanagiyaTakeshi YamaguchiYutaka MitookaTeruto Kanadani
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2020 Volume 84 Issue 3 Pages 109-114

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Abstract

In this study, the effects of carbon nanoparticles fixed to the surfaces of AM60B and AZ91D magnesium alloy chips on the mechanical properties were examined. The manufacture of magnesium-carbon alloy is not easy because carbon does not possess the property of wettability for magnesium. However, magnesium alloy chips fixed to carbon nanoparticles enable magnesium-carbon alloys to be produced by the thixomolding process. Mechanical properties such as the tensile and fatigue strengths were improved by only 0.1 mass% of the carbon addition because of the decrease in the void and the refinement of crystal grains. In addition, the AZ91D magnesium alloy was proven to be more effective than the AM60B magnesium alloy for the decrease in the void and the refinement of crystal grains by the carbon addition. The aluminum content of the AZ91D magnesium alloy is higher than that of the AM60B alloy. It seems that the void formation is based on the hydrogen by the reaction between aluminum in the magnesium alloy and water. Therefore, the effect of carbon addition on the mechanical properties was dependent on the aluminum content in the magnesium alloys.

1. 緒言

マグネシウム合金は,軽量で比剛性が高く,放熱性,防振性,電磁波シールド性に優れるなど多くの特性を有しているため,様々な携帯電子機器フレームに適用され,その多くがチクソモールディング法によって成形されている1).著者らは,チクソモールド成形において,出発原料であるAZ91Dマグネシウム合金チップの表面にカーボンナノ粒子を0.1 mass%付着させることによって機械的性質や湯流れ性が大幅に向上することを報告した2,3).現在,ノートPCやタブレットをはじめとする種々の電子機器フレームに適用され,機器の小型化や軽量化に貢献している4)

一方,輸送機器分野では,地球温暖化対策の一環として,燃費向上を目的とした車両重量の軽減が緊急の課題となっており,マグネシウム合金が軽量材料として期待され,その適用は増加傾向にある5).チクソモールディング法は,薄肉で複雑形状品の成形に適しており,その特長を活かし,携帯電子機器フレーム等に多用されてきたが,今後,自動車等への適用を拡大させるためには,成形材の肉厚を増大させる必要がある.しかし,肉厚の増加とともに凝固収縮による鋳巣や空気の巻き込みによるボイドなどの鋳造欠陥が生じやすく,機械特性の低下が懸念される.特に自動車等の輸送機器分野では厳しい耐久性が要求され,構造部材に適用するためには疲労特性を含む機械特性を明らかにする必要がある.

本研究では,AM60BおよびAZ91Dマグネシウム合金チップを用い,チクソモールディング法によって肉厚の異なる試験片を作製し,機械特性に及ぼすチップ表面へのカーボン修飾の効果および肉厚の影響を検討するとともにカーボン修飾によるボイド抑制機構を考察した.

2. 実験方法

チクソモールド成形に用いるチップは,市販のAM60BおよびAZ91Dマグネシウム合金インゴットからチッピングマシンによって約4 mm × 2 mm × 2 mmに削りだし,作製した.AM60BおよびAZ91Dマグネシウム合金チップの化学組成をTable 1に示す.チップ表面にカーボンナノ粒子を付着させるため,カーボンナノ粒子をチップ重量の0.1 mass%添加し,ミキサーによって一定時間攪拌した.チクソモールド成形は,マグネシウム用チクソモールドマシン((株)日本製鋼所製,M280-MGIIe,型締め力2750 kN)を使用した.

Table 1

Chemical composition of AM60B and AZ91D magnesium alloy chips (mass%).

マグネシウム合金チップおよびその表面にカーボン付着処理を施したチップを用い,同一条件下でそれぞれチクソモールド成形を行った.引張試験について,AM60B合金は直径13 mmの丸棒(長さ140 mm),AZ91D合金は平板(200 mm × 100 mm × 2 mm)を用い,AM60B合金は直径10 mm,平行部30 mm,AZ91D合金は幅10 mm,平行部60 mmのダンベル状試験片に加工して使用した.なお,AZ91D合金について,AM60B合金と同様に丸棒成形品を加工した場合,平行部に欠陥が露出し,伸びが低下するため,板厚2 mmの平板を使用した.疲労試験はFig. 1に示すR部の直径が4 mmおよび7 mmの2種類の試験片を評価した.なお,疲労試験片は成形後,表面からおよそ0.15 mmまで旋盤加工した.各試験片R部の表面粗さを共焦点走査型レーザ顕微鏡(オリンパス(株)製OLS4000)によって測定するとともに,表面および断面観察を行い,ボイド等の鋳造欠陥の状態を確認した.また,R部の断面について,電子線背面散乱図形(EBSD)解析を行った.疲労試験は,回転曲げ疲労試験機(YRB200:(株)山本金属製作所)を用い,回転数3150 rpm(52.5 Hz)で行った.さらにAZ91Dマグネシウム合金について,ボーカルマス高感度質量分析装置を用い,出発原料のインゴットおよびチクソモールド成形材のガス分析を行った.

Fig. 1

Appearances of the thixsomolded AZ91D fatigue specimens. (a) R: ɸ4 mm, (b) R: ɸ7 mm.

3. 実験結果および考察

3.1 チクソモールド成形材に及ぼす原料チップへのカーボンナノ粒子付着の影響

Fig. 2には,AM60B合金チップ表面へのカーボンナノ粒子付着処理前後のチップ外観を示す.インゴットから削りだしたままのチップは光沢を有した銀白色であるが,ミキサーによって0.1 mass%のカーボンナノ粒子を表面に付着させたチップは黒色で光沢も失われた.添加したカーボン量は重量比0.1 mass%と微量であるがチップ外観の色調を大きく変化させた.AZ91D合金チップもAM60B合金の外観と同様であった.一方,カーボン添加有無のチップをそれぞれ出発原料とし,チクソモールド成形した試験片は,カーボン添加の有無によらず,全て銀白色を呈しており,チップの段階で認められた外観での色調の違いは消失した.また,切削加工後の外観(Fig. 1)は,金属光沢を有した銀白色であり,チップ表面に付着したカーボンナノ粒子による成形材の外観への影響は認められなかった.なお,旋盤加工後の試験片を目視観察した結果,カーボン添加の有無にかかわらず,試験片の表面には鋳巣などの顕著な欠陥は認められなかった.

Fig. 2

Appearances of the magnesium chips. (a) AM60B chips, (b) Carbon fixed AM60B chips.

Fig. 3には,AM60B合金について,旋盤加工後の試験片R部表面をSEMによって観察した結果を示す.カーボン添加の有無によらず試験片はともに切削加工に基づくツールマークが観察されるが,ボイド等の顕著な鋳造欠陥は観察されず,AZ91D合金についても同様であった.また,表面粗さが疲労強度に対して影響を及ぼすことから6),各々の試験片の表面粗さを測定した結果,全ての試験片の表面粗さRaは0.540 ± 0.030 µmの範囲内であり,合金の違いならびにカーボン添加の有無によって大きな差異はないことを確認した.なお,切削加工による残留応力も疲労強度に影響を及ぼすことが予想されるが,実験に供した試験片は全て同じ条件で切削加工を行っているため,本実験の目的である疲労強度に対するカーボン添加の影響を明らかにするという点については可能と考えられる.

Fig. 3

SEM images of each specimen surface at R part.

Fig. 4には,各試験片R部での断面マクロ写真を示す.いずれの試験片も大小様々なボイドが観察され,これらのボイドはチクソモールド成形による凝固収縮およびエアーの巻き込み等によって生成されたものと推測される.AM60B合金およびAZ91D合金ともにɸ10 mmの厚肉部(チャック部)のボイドは,径の細いR部でのそれよりも数およびサイズともに増加している.また,R部について,ɸ7 mmの部位はɸ4 mmよりもボイドの数およびサイズともに増加していることから,チクソモールド成形では厚肉部でよりボイドが生じやすいことがわかる.さらにこれらのボイドは,金型に接した外周部よりも心部ほど多く,R部の目視観察およびSEM観察(Fig. 3)においてボイド等の顕著な鋳造欠陥が認められなかった結果と合致している.

Fig. 4

Cross-sectional macroscopic photographs of each specimen at R part.

一方,カーボン添加の影響について,両者のボイドを比較すると,AM60B合金およびAZ91D合金ともにカーボン添加によってボイドの発生数および大きさともに減少した.このようにチップ表面に付着したカーボンナノ粒子は成形時に材料内に生じるボイドを減少させる効果を有していることがわかった3).なお,カーボン未添加のAM60B合金とAZ91D合金を比較すると,AZ91D合金は,AM60B合金よりもボイドの数が多く,また,大きなボイドが生じている.このことは,合金中のアルミニウムがボイドの形成に密接に関わっていることを示唆している.

Fig. 5には,R部断面の外周付近でのEBSD解析結果を示す.カーボン未添加の場合,AM60B合金およびAZ91D合金ともにR部ɸ4 mmでの結晶粒のサイズはɸ7 mmのそれよりも細かくなっている.これは,金型の径が細いため,R部ɸ7 mmの部位よりもR部ɸ4 mmの部位の冷却速度が速いことに起因する.カーボン添加によって,AM60B合金およびAZ91D合金とも結晶粒が細かくなっているが,両者を比較するとAZ91D合金の方がAM60B合金よりも微細化がより顕著に認められた.特にカーボン添加したAZ91D合金のR部ɸ7 mmにおける結晶粒は最も微細であった.これまでカーボン添加による結晶粒の微細化について,添加したカーボンが析出核として作用することによって結晶粒を微細にさせることが明らかにされている7).本実験におけるカーボン添加も同様の効果を示していると思われるが,合金の種類によって微細化の効果が異なる結果は,添加したカーボンがそのまま析出核として作用するのではなく,例えばカーボンと合金中の成分が反応した生成物が析出核として作用していることも考えられることから,今後,この点については更なる検討を行う予定である.

Fig. 5

Grain boundary maps obtained by EBSD analysis for AM60B and AZ91D alloy at R part.

3.2 機械特性へのカーボンナノ粒子添加の効果

引張試験より得られた各合金の0.2%耐力,引張強度,および伸びをTable 2に示す.各合金ともにカーボン添加によって0.2%耐力,引張強度および伸びが向上しており,引張特性に対してカーボン添加の有用性が明らかになった.しかし,カーボン添加の効果は,AZ91D合金の方がAM60B合金よりも大きく,合金の化学組成によって異なった.Fig. 4に示したボイド発生への抑制効果およびFig. 5に示した結晶粒サイズの微細化はAZ91D合金がAM60B合金よりも大きく,引張特性と一致している.

Table 2

Tensile properties of various specimens.

Fig. 6には,回転曲げ疲労試験によって得られたAM60B合金のS-N曲線を,Fig. 7には,AZ91D合金のS-N曲線を示す.なお,低荷重領域では回転数が107回に達しても破断に至らなかったため,その時点で試験を終了し,その時の疲労強度(図中の矢印)を用いて評価した.両合金ともにR部ɸ4 mmの試験結果は,R部ɸ7 mmのそれと比較し,大きく変動しているが,これは肉厚の薄いR部ɸ4 mm試験片の方がFig. 4に示したボイドの影響を受けやすいためと考えられる.

Fig. 6

Relation between stress amplitude (σa) and number of cycles to failure (N) for AM60B alloy.

Fig. 7

Relation between stress amplitude (σa) and number of cycles to failure (N) for AZ91D alloy.

AM60B合金について,R部ɸ4 mmの試験結果では変動が大きいため,疲労強度の値を定めることは困難であるが,カーボン添加によって疲労強度は僅かに向上した.一方,R部ɸ7 mmの試験結果では変動が抑制され,カーボン添加によって疲労強度が6%程度向上し,0.2%耐力の7%向上と同程度であった.なお,R部ɸ7 mmの疲労強度が,R部ɸ4 mmのそれよりも低下しており,肉厚の増加が疲労強度を低下させるいわゆる寸法効果8)が認められた.しかし,その他にも疲労強度が大幅に低下している要因として,疲労強度に対して重要な因子である結晶粒サイズの影響が考えられる.Fig. 5に示したEBSD解析結果から,カーボン添加の有無によらず,R部ɸ7 mmの結晶粒サイズはR部ɸ4 mmのそれよりも粗大になっており,この結晶粒の粗大化も疲労強度の低下につながっていると考えられる.

次に,AZ91D合金について,AM60B合金と同様にR部ɸ4 mmの試験結果では変動が大きいため,疲労強度を求めることは難しいが,カーボン添加によって疲労強度は明らかに向上している.一方,R部ɸ7 mmの試験結果では変動が抑制され,カーボン添加によって疲労強度は97 MPaと未添加の80 MPaに比べ,20%程度向上し,同じカーボン添加したAM60B合金のR部ɸ7 mmでの疲労強度92 MPaを上回った.Table 2に示した引張特性において,AM60B合金の引張強度および伸びはAZ91D合金のそれらを大幅に上回っており,特に疲労強度と密接に関わる伸びはおよそ10倍高い値を示している.本来,引張特性の結果に基づけば,AM60B合金の疲労強度は,AZ91D合金のそれよりも高い値を示すことが予想される.カーボン添加したR部ɸ4 mmでは,AM60B合金の疲労強度がAZ91D合金のそれを上回っており,引張特性を反映した結果となっている.しかし,肉厚の増したR部ɸ7 mmでは,逆の結果を示したが,これにはFig. 5に示した結晶粒サイズが影響していることが考えられる.すなわちカーボン添加したR部ɸ7 mmにおけるAZ91D合金の結晶粒サイズは同じ径のAM60B合金のそれよりも大幅に微細化されており,疲労強度の向上に寄与していると考えられる.

3.3 カーボンによるボイドの抑制効果

前節において,成形材内部に生じるボイドおよび結晶粒サイズが機械特性に影響を及ぼすことが判明した.ここではボイドの発生要因とカーボンによるボイドの抑制作用について考察する.Fig. 4に示したようにカーボン未添加の場合,AZ91D合金に生じたボイドは,AM60B合金のそれよりも大きく,数も多い.また,これまでアルミニウムを含まないMg-Zn合金チップによるチクソモールド成形品に関して,カーボン未添加および添加にかかわらず,目視で確認できるボイドは生じないことが確認されている.このことは,合金中のアルミニウムがボイドの形成に密接に関わっていることを示している.

そこで,アルミニウム量の多いAZ91D合金について,出発原料のインゴットおよびチクソモールド成形後にボイドがより多く生じたチャック部(ɸ10 mm)をそれぞれガス分析し,その結果をTable 3に示す.インゴットについて,H2は10.09 cc/Mg100 gであり,全てのガスの中で最も多く検出され,その他のガスはそれぞれ1.00 cc/Mg100 g以下であった.カーボン未添加の成形材では,H2,CO/NおよびCO2が増加しており,特にH2量は,364.02 cc/Mg100 gと著しく増加した.一方,カーボン添加した成形材のガス量は全ての成分で未添加のそれよりも減少し,特にH2量は1/4以下に減少した.CO/NおよびCO2はエアーに起因するガスであり,チクソモールド成形時に材料中に巻き込まれたエアーと推測される.そのためボイドの多いカーボン未添加材のCO/NおよびCO2量はボイドの少ないカーボン添加材のそれよりも多く検出される.次に,H2は大気中に多く存在するガスでないことから,通常,材料に起因するガス成分である.インゴットでのH2量は10.09 cc/Mg100 gであるが,チップ加工後,チクソモールド成形によってH2量は364.02 cc/Mg100 gまで増大する.このようにチクソモールド成形時にH2が生成すると同時に,生成したH2がボイドの形成に関与していることが推測される.カーボンを添加した成形材のH2量が79.27 cc/Mg100 gと,カーボン未添加材のそれよりも大幅に減少し,ボイドも減少する結果はH2によるボイド形成を示唆している.

Table 3

Results of gas analysis (cc/Mg100 g).

次に,チクソモールド成形におけるH2の生成要因について,以下に考察する.ガス分析において,チップの水素量は,インゴットのそれよりも大幅に増加する結果が得られており,この結果はチクソモールド成形前のチップ表面には大気中の水蒸気が吸着し,表面に水酸化マグネシウムが生成していることを示唆している.チクソモールド成形時にチップはシリンダ内で加熱され,スクリューによって機械的に攪拌されながら射出側に送られる.水酸化マグネシウムはおよそ600 K以上に加熱されると酸化マグネシウムと水に分解することから9),マグネシウムチップはシリンダ内で873 K付近まで加熱されるため,チップ表面の水酸化マグネシウムは酸化マグネシウムと水に分解する.これまでアルミニウムと水の接触によって大量の水素が発生することが報告されており10),水酸化マグネシウムの分解によって生じた水がAZ91D合金中のアルミニウムと反応し,大量の水素を発生したものと考えられる.AZ91D合金よりも合金中のアルミニウム量の少ないAM60B合金のボイドが,AZ91D合金のそれよりも減少する結果もアルミニウムと水の反応による水素発生によって説明することができる.

一方,カーボンナノ粒子をチップ表面に付着させることによって成形材に生じるボイドが抑制されるが,ボイドが前述のアルミニウムと水の反応による水素発生であるならば,チップ表面のカーボンナノ粒子がアルミニウムと水の反応を抑制することになる.カーボンには吸水性があり,特に微細化するほど吸水性が大幅に増大する11).実験に用いたカーボンナノ粒子の平均粒径は20 nmと極めて微細であるため,良好な吸水性を有しており,水酸化マグネシウムの分解によって生じた水を吸水する.そのためアルミニウムと水の反応が抑制され,結果的に水素発生が減少したと考えられる.

Fig. 8には,成形部の厚さが0.5 mmの渦巻き金型を用い,同一条件(射出温度853 K,射出速度2.5 m/s)にてチクソモールド成形を行った成形品の外観を示すが,カーボン添加したAZ91D合金の流動長は未添加のそれと比べ,大幅に伸張しており,湯流れ性が向上した.これは射出成形時に溶湯が金型内へスムーズに流入されたことを示しており,この結果も前述したカーボン添加によるシリンダ内での溶湯中の水素ガス減少を支持している.

Fig. 8

Appearances of fluidity testing by thixomolding. (a) AZ91D magnesium alloy, (b) Magnesium-carbon alloy.

4. 結言

チクソモールド成形によるAM60BおよびAZ91Dマグネシウム合金の機械特性に及ぼすチップ表面へのカーボンナノ粒子修飾の効果を検討した.その結果,チップ表面へのカーボン修飾は成形品の結晶粒を微細化させるとともに材料内部に生じるボイドを減少させる作用を有しており,引張特性のみならず疲労特性を含む機械特性を向上させることが明らかになった.その際,カーボン添加の効果は合金の種類によって異なり,アルミニウム添加量が多いAZ91D合金の方がより効果的に作用することが判明した.なお,カーボンによるボイド抑制について,チップ表面に修飾したカーボンナノ粒子がチップ表面に生成した水酸化マグネシウムの加熱によって生じる水を吸水し,合金中のアルミニウムと水との反応を抑制することによって水素ガスの発生を減少させるためと推測される.

文献
 
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