2025 年 89 巻 1 号 p. 1
本特集論文13編は,2023年Materials Transactions の7月号と8月号に掲載された特集論文 「Superfunctional Nanomaterials by Severe Plastic Deformation」 53編の中から邦訳された論文で,日本語翻訳に賛同いただいた著者や共著者の協力を得て発行したものである.実は,巨大ひずみ加工に関する研究については,2019年の7月号と8月号でもMaterials Transactionsで特集を編纂し, 「Severe Plastic Deformation for Nanomaterials with Advanced Functionality」 のテーマの下で公開している.
巨大ひずみ加工とは,材料中に大量の塑性ひずみを導入し,結晶粒の超微細化をはじめ,第2相粒子の微細分散化が達成できる組織制御プロセスである.高強度や高延性の機械的特性向上ばかりでなく,電気特性,磁気特性など,また耐食性や水素貯蔵特性,光触媒性など多くの機能特性向上にも効果的として注目されている.Materials Transactionsで編集した2019年と2023年の特集号では,いずれもプロセス開発から,特性評価,組織解析,計算シミュレーションなど,巨大ひずみ加工に関わる多数の論文が,ReviewやOverview論文として公表されている.2019年の特集号論文に対しては,Materials TransactionsでのCurrent Trends in Researchとして[Z. Horita and K. Edalati: Mater. Trans. 61 (2020) 2241.],またMaterials Research Letters [K. Edalati et al.: Mater. Res. Lett. 10 (2022) 163.]におけるReview論文として特集論文の紹介記事が掲載されている.2023年の特集号では 特集に参画した著者全員を著者としてJournal of Alloys and Compoundsで特集号の紹介がなされている[K. Edalati et al.: J. Alloys Compd. 1002:174667].本特集は,2023年公開の特集論文全てではないものの,巨大ひずみ加工に関しては日本語で発行された初めての特集となる.最近の巨大ひずみ加工に関する研究動向が掴める特集号であり,併せて日本金属学会誌の活性化に貢献するものと期待している.
最後に,本邦訳特集を編集するにあたり,和文翻訳に快諾いただいた著者の方々,また論文査読にご協力いただいた方々,さらには学会編集事務局の方々に,厚く御礼申し上げます.