日本食生活学会誌
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論文
調理による脳の活性化 (第一報)
―近赤外線計測装置による調理中の脳の活性化計測実験―
山下 満智子川島 隆太岩田 一樹保手浜 勝太尾 小千津高倉 美香
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2006 年 17 巻 2 号 p. 125-129

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抄録

  最新脳科学の研究成果に注目して, 脳の健康という視点で「調理の効用」を研究するために, 無侵襲・低拘束性の近赤外線計測装置により調理中の脳活動を計測した。
  計測に使用した近赤外線計測装置は, 頭皮から20ミリほどの深さにある大脳皮質の活性状態を近赤外線の照射によって計測する装置である。本実験の脳の測定部位は, 大脳の前頭連合野で, 運動・感覚・認知・言語・思考など高次脳機能に関連する。
  実験方法は, 成人女性15名に対して, 夕食の献立を考える, 野菜を切る, ガスコンロを使って炒める, 皿に盛り付けるという作業を課し, 各調理の手順における脳活動の計測を行った。
  計測の結果, 夕食の献立を考える, 野菜を切る, ガスコンロを使って炒める, 皿に盛り付けるという調理の各手順で, 左右の大脳半球の前頭連合野の活性化が確認された。
  音読や計算による脳の活性化の確認やそれらを組み合わせた学習療法による実践的研究や本実験結果から「調理を行うこと」によって前頭連合野を鍛えることができると考えられ, 前頭連合野の働きである他者とのコミュニケーションや身辺自立, 創造力など社会生活に必要な能力の向上が期待されることが示唆された。

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© 2006 日本食生活学会
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