日本食生活学会誌
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思春期の子どものキッチンの仕事と役割意識
日英比較
奥田 和子ハケット アラン
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1999 年 10 巻 3 号 p. 51-58

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抄録

大人の入り口にさしかかる思春期の子どもは, キッチンで一人立ちして食事づくりができるような自己管理能力が求められている. そこで, 神戸市内中学生262人, 英国ハイスクール生166人, 計428人, 13~15歳を対象にその実態と意識を調査し, 食事づくりの自立の方向性を探った.
(1) 両国とも手伝いの頻度が高い子どもは手伝いの内容が広い傾向にあった. 一部の仕事に限定せず, 広範囲に仕事をさせることで自立につながることが示唆された. 英国では買い物, 後かたづけ, 食事づくりと仕事の範囲が広いのに対して, 日本では食べた食器を流しに運ぶというほんの一部に限定されていた.
(2) 仕事の手伝いの頻度および内容において, 日本では男女間で有意差がみられた. しかし, 英国では有意差がみられなかった. 日本は, 男子ばかりでなく女子も英国の子どもに比べて頻度内容共に低く, 子ども全体が手伝いをしていない. とくに男子の手伝い意欲を高める必要性がある.
(3) キッチンの仕事は男性女性のいずれの性がすべきか, 子どもの意識を尋ねたところ, 日本では「両性がすべき」という答えは半数どまり(40~55%)である. 一方「女性がすべき」は男子(39~67%), 女子(29~51%)共に多い. 英国では「男性と女性が両方ですべき」は男子(57~66%)女子(78~84%)共にトップであり, 女子の子どもの方が多い.
両国間の男女の子どもで役割意識は大幅に異なっていた. 男子厨房に入らずという日本社会の根強い役割意識は, 思春期の男子だけでなく女子にも存在することを認めた. 女子の子どもの意識改革も必要である.
思春期の子どもに, キッチンの仕事の自己管理ができるようにするための若干の示唆が得られた.

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