日本救急医学会雑誌
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症例報告
炭酸カリウム服用によりAbdominal Compartment Syndromeと全小腸壊死に至った1例
田口 茂正清水 敬樹横手 龍五木田 昌士勅使河原 勝伸関井 肇清田 和也
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2007 年 18 巻 5 号 p. 188-195

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抄録

症例は52歳の男性。自殺目的に炭酸カリウムを主成分とする強アルカリ性の現像液を約300ml服用し, 上腹部痛・嘔気を主訴に当救命救急センターへ搬送された。病着時に腹膜刺激症状は認めなかった。腐食性物質の服用を疑って施行した上部消化管内視鏡では食道, 胃, 十二指腸に出血性びらんと粘膜壊死を認めた。入院後カリウム吸収による高カリウム血症から心室細動を発生したが速やかに心拍再開が得られ, 後遺症も残さなかった。第3病日には腸管浮腫によりabdominal compartment syndrome (ACS) となりICUで減圧開腹術を施行し, 全層性に壊死した小腸を170cm切除した。第13病日に胃穿孔が疑われ再手術を施行, 胃に広範な全層壊死と穿孔を認め, 胃全摘と消化管再建術を行った。以降, 集学的治療を行うも全腸管壊死, 汎発性腹膜炎に陥り, 第26病日に死亡した。炭酸カリウムの服用による中毒例の報告は渉猟し得た範囲では1例のみである。強アルカリの服用では消化管の融解壊死が問題となり, 十二指腸より遠位の障害の報告例は少ない。本症例では胃, 小腸が短期間に漿膜まで壊死に陥るほど重篤な障害が生じた。強アルカリの大量服用では上部消化管だけではなく, ACSの発生を含めた小腸, 大腸の障害の可能性を念頭に置いた管理と対処が必要である。

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© 2007 日本救急医学会
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