日本救急医学会雑誌
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症例報告
心肺機能停止状態に陥った総腸骨動脈瘤下大静脈瘻の1救命例
小島 直樹佐々木 庸郎石田 順朗稲川 博司岡田 保誠尾崎 公彦北条 浩
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2007 年 18 巻 7 号 p. 291-296

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抄録

我々は総腸骨動脈瘤破裂により動静脈瘻が形成され, 術前心肺機能停止に陥ったが救命し得た症例を経験した。症例は65歳の男性, 既往はとくになかった。突然の胸背部痛を自覚し, 急性心筋梗塞疑いで当院へ搬送された。心電図及び心臓超音波検査により急性心筋梗塞を否定したが, 外来処置中に心肺機能停止状態に陥った。心肺蘇生法を行いながら施行した腹部超音波検査により腹部大動脈瘤を確認したため, 出血性ショックを念頭に大量輸液を含めた心肺蘇生法を行い続けたところ心拍再開を得た。しかし, 頸静脈は一貫して怒張しており出血性ショックが心肺機能停止の原因とは考えにくい身体所見であった。心拍再開後, 循環動態の維持が可能となったので, 腹部骨盤造影CTを撮影し腎動脈下に右総腸骨動脈瘤下大静脈瘻が確認され, これが心肺機能停止状態の原因と考えられ緊急手術を行った。手術は動脈瘤を開放し, 瘻孔にバルーンカテーテルを挿入し, 出血を制御しながら縫合閉鎖し人工血管置換術を施行した。術後, 多臓器不全のため6日間ICUに滞在したが, 第31病日退院した。本病態は総腸骨動脈下大静脈瘻のなかでもその瘻孔が1.5cmと比較的大きく急激に拡大したために急速に心肺機能停止状態に陥ったと考えられた。大動脈瘤の合併症の中には稀ながら動静脈瘻の形成という病態が存在し, なかでも本症例のように急激に循環不全に陥る可能性があることを念頭におく必要があると考えられた。

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© 2007 日本救急医学会
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