抄録
【目的】院内で発生する予期せぬ突然の心停止患者の特徴を調べ,転帰に影響を与える因子を検討する。【方法】2005年 1 月から2007年 6 月までに当院で突然心停止となった患者を対象とし,ウツタイン様式に基づきデータを収集,前向きに観察研究を行った。【結果】対象は112例で平均年齢71.4歳。CCUまたは循環器病棟で全体の52.7%の心停止が発生した。発見方法は直接目撃が51例(45.5%),モニターで発見33例(29.5%)と全体の75.0%が心停止直後に発見されていた。初回心電図波形はPEAが71例(63.4%)と多く,VF / pulseless VTは24例(21.4%)であった。心停止から蘇生開始まで平均0.6分,除細動まで平均4.2分,気管挿管まで平均5.0分,薬物投与まで平均6.2分であった。112例中55例(49.1%)に心拍再開を認め,13例(11.6%)が生存退院した。そのうち12例は脳神経機能も良好であり,すべて心原性心停止であった。心拍再開に影響を与える因子は初回心電図がVF/pulseless VT(オッズ比4.14,95%信頼区間1.50-11.42),呼吸原性心停止(オッズ比6.88,95%信頼区間1.45-32.65)であった。一方,生存退院に影響を与える因子は心停止直後の発見,初回心電図がVF/pulseless VT(オッズ比12.6,95%信頼区間3.44-46.22),心原性心停止(オッズ比16.89,95%信頼区間2.12-135.72)及び迅速なエピネフリン投与(オッズ比0.75)であった。【結論】心原性心停止は高い生存退院率と良好な脳機能予後が期待された。しかし,初回心電図でVF/pulseless VTは21.4%と院外心停止に比べ少なく,院内心停止の転帰を改善させるためには早期除細動のみでは限界があると思われた。一方,非心原性心停止は転帰が悪く,心停止に至る以前に心停止の予兆を早期発見,早期対処することが重要である。