日本救急医学会雑誌
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症例報告
AED実施に先行する長時間の適正な胸骨圧迫が良好な神経学的転帰の鍵となった心肺停止の1例
吉川 恵次高橋 将史行田 祐樹川井 桂羽柴 正夫
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2008 年 19 巻 4 号 p. 219-228

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抄録

症例は58歳,男性。アルコール依存症で某精神病院に入院中。原因不明の心肺停止(CPA)を来した時期は抗酒薬の投与で無症状,安定期にあった。某日,午前 6 時55分,病棟ホールでCPAとなった。CPAの 1 分後から,胸骨圧迫の中断をできる限り少なくした心肺蘇生(CPR)を開始,継続した。卒倒から14分後に初回のAED通電, 3 回目の通電が心肺停止後30分での自己心拍再開に繋がった。転院先病院での低体温療法を併用しない集中治療の後,患者の神経学的所見はCPA前の程度にまで回復,良好な神経学的転帰が得られた。本症例はCPAからAED実施まで経過時間が長い場合でも,適正なCPRが実施されれば脳血流の維持による良好な神経学的転帰が期待できることを示した症例と考えられる。AED心電図では心室細動に対するアドレナリン投与の有効性が示唆された。

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© 2008 日本救急医学会
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