日本救急医学会雑誌
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症例報告
外傷性横隔膜ヘルニアによってtension gastro-colo-splenothoraxが生じ心肺停止に至った1例
久保田 信彦星野 弘勝早川 峰司澤村 淳丸藤 哲
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2008 年 19 巻 6 号 p. 322-326

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抄録

32歳,女性。墜落による左血胸,左多発肋骨骨折,肝損傷,腰椎骨折,腰髄損傷症例である。腰髄損傷による両下肢完全麻痺が残存したため,当院でリハビリテーション中であった。受傷3か月後から,それまで認められなかった心窩部痛を自覚するようになった。受傷 4 か月目に,同様の症状を訴えた後,心肺停止に至った。胸部エックス線写真ならびにCT写真上,左横隔膜の挙上とともに左肺野に胃泡を認めた。病理解剖では,左横隔膜に 9 × 7 cmの裂孔が認められ,胃,結腸,大網,脾が胸腔内に脱出していた。受傷時の横隔膜損傷が,その 3 か月に左横隔膜ヘルニアを引き起こし,さらにその 1 か月後にtension gastro-colo-splenothoraxを形成して心肺停止に至ったと思われる。重症外傷後,遅発性に生じた横隔膜ヘルニアがtension gastro-colo-splenothoraxを引き起こし心肺停止に至った希少症例を経験した。

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© 2008 日本救急医学会
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