日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
原著論文
胸腔ドレナージ排液量よりみた重症胸部外傷の手術適応の再検討
水島 靖明上野 正人西内 辰也松岡 哲也
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 19 巻 7 号 p. 409-415

詳細
抄録

鈍的胸部外傷患者の急性期の治療戦略,とくに手術療法の適応を明らかにするため,鈍的損傷かつ胸部AIS 3以上の254例を対象とし,治療経過と予後を検討した。155例(61%)が他部位AIS 3以上の多発外傷であり,急性期に開胸術が施行されたものは24例(9.4 %) であった。また,手術症例での術前の,BE,プロトロンビン時間,体温の検討では,19症例でいわゆる外傷死の三徴(deadly triad)の基準のひとつ以上を満たし, 5 症例で,三徴すべてを満たしていた。また,血胸で手術を施行した14症例の検討では,従来の開胸適応とされる胸腔ドレナージ排液量より少ない排液量で開胸が行われた例がほとんどであった。手術療法を要する鈍的胸部外傷では,多発外傷であることが多く,低体温,凝固障害など状態が急激に悪化することを考慮し,迅速な手術決定が不可欠である。従来の胸腔排液量を開胸の基準とした場合,手術判断が遅れる可能性があると考えられる。

著者関連情報
© 2008 日本救急医学会
次の記事
feedback
Top