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日本救急医学会雑誌
Vol. 20 (2009) No. 12 P 915-922

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http://doi.org/10.3893/jjaam.20.915

総説

重症セプシスに対する強化インスリン療法やショックに対するステロイド投与,更に活性化プロテインC投与などの項目は,いずれも初版Surviving Sepsis Campaign(SSC)ガイドラインにおける目玉とされていた。しかしその後の追試により,これらの治療効果には疑問符が付けられ,推奨が引き下げられることとなっている。一方SSCガイドラインにはとりあげられていないにもかかわらず,本邦で広く実施されている治療として,ポリミキシンB固定化カラムによるエンドトキシン吸着療法(PMX-DHP),disseminated intravascular coagulation(DIC)に対する抗凝固療法,更にacute respiratory distress syndrome(ARDS)に対するシベレスタットナトリウムの投与などがある。このうちPMX-DHPについては,最近イタリアで実施されたrandomized controlled study(RCT)において有効性が確認され,一躍注目されるところとなった。一方アンチトロンビンのように海外では投与を控えるよう推奨されている薬剤が,国内ガイドラインでは投与を推奨されていたり,シベレスタットナトリウムのように海外試験で効果が否定された後に国内で実施された市販後臨床試験で効果が再確認されるなど,いわゆるねじれ現象もみられる。このような状況下で我々臨床医は,国内で広く実施されている治療に明確なエビデンスが存在しなかったり,あるいはいわゆるグローバルスタンダードと称されるような治療においてすら,そのエビデンスには不確実なものが多数含まれていることを認知しておくことが必要である。エビデンスに基づく治療の重要性は言うまでもないが,こと重症セプシスにおける治療法の選択に際しては,人種差以外にも国ごとに異なる医療事情や歴史的背景をも理解しておくことが必要である。そして臨床応用に際しては,個々の症例ごとにエビデンス以外にも知識や経験を総動員し,更に施設の対応状況なども加味したうえで,テーラーメード診療をめざすことこそ重要であり,画一的にガイドライン診療を適応するのはむしろ慎むべきであると考える。

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