そもそも播種性血管内凝固(DIC)は,「種々の基礎疾患に合併する全身的な血管内凝固の活性化状態で,初期には検査値異常のみで捉えられるが,重症化すると出血症状や臓器症状を呈し,その背景には全身的な微小血栓形成が関与している病態」として認知されてきた。すなわち基礎疾患は異なっても,検査値異常としては共通であることがその存在意義であった。しかしその後詳細が明らかにされるにつれ,治療や経過,転帰は基礎疾患によってそれぞれ異なることが明らかされてきた。したがって最近では,これらをひとくくりに診断し治療することの妥当性が問われるようになり,むしろ個別対応することの必要性が強調される傾向にある。とくに敗血症性DICは,その頻度と緊急性,重症度の高さから注目度が高くなっている。またDICの捉え方については,合併症のひとつという見地から,感染防御のための生体反応という意味合いを見いだそうとする方向性がみてとれる。診断に関しては,より早期に診断を行って抗凝固治療を迅速かつ積極的に始めようとする動きが顕著である。治療については,アンチトロンビン,トロンボモジュリン,活性化プロテインCなどの生理的抗凝固物質がとくに重要視されており,いずれも単に凝固を調節するだけではなく,炎症反応を制御することが期待されている。