日本救急医学会雑誌
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症例報告
Multidetector-row CTにより2個の遅発性仮性動脈瘤の自然消失を描出し得た鈍的肝損傷の1例
尾中 敦彦高野 啓佑岡 宏保植山 徹松阪 正訓中村 達也
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2013 年 24 巻 4 号 p. 231-236

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抄録

鈍的肝損傷後に形成された仮性動脈瘤の自然消失に関する報告は少ない。今回,2個の遅発性仮性動脈瘤の自然消失がmultidetector row computed tomography(MDCT)により描出された鈍的肝損傷症例を報告する。症例は交通事故により肝損傷を受傷した17歳の男性である。入院時のMDCTでは複雑深在性肝損傷を認めたが,血管造影では血管外漏出像および仮性動脈瘤は認めなかった。その後のMDCTで受傷12日目に6mmの仮性動脈瘤の遅発が描出されたが,19日目には自然閉塞した。さらに別の直径約4mmの仮性肝動脈瘤が19日目のMDCTで出現したが,26日目には消失した。自験例では,動脈相のMDCT画像で描出された仮性動脈瘤は門脈相では描出されず,動脈相MDCT画像が遅発性仮性動脈瘤の自然消失を描出するために有用であった。動脈相MDCT画像は仮性動脈瘤の検出能力を改善することが可能であった。鈍的肝損傷に伴う仮性動脈瘤の適切な評価を行うためには動脈相MDCT画像が必須である。

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© 2013 日本救急医学会
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