日本救急医学会雑誌
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症例報告
多発肋骨骨折を伴う鈍的胸部外傷により遅発性心破裂を来した1例
冨岡 百合子吉村 久福岡 正人辰巳 嘉章
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2014 年 25 巻 11 号 p. 827-832

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抄録

61歳の男性。高さ1.5mの塀から転落して左側胸部を打撲し,当院に入院した。来院時,意識清明でvital signsも安定していた。胸部CTで左多発肋骨骨折と血気胸を認め,胸腔ドレナージを行った。受傷より56時間後, 突然の意識消失を来し,橈骨動脈を触知できなかったため胸骨圧迫を行ったところ,直後に意識は改善した。その短時間で胸腔ドレーンより血性排液140mLの増加がみられ,胸部造影CTでは心臓周囲に血管外漏出を認めた。左第5肋間より側方開胸したところ,第5肋骨骨折端が鋭利に突出して心嚢に接しており,その直下より出血を認めた。心膜を切開すると血液が噴出し,心尖部近くの左心室に10mmの心筋破裂がみられた。フェルト短冊をおいてポリプロピレン糸で水平マットレス縫合を行い,止血を得た。本例では,来院時に心嚢液貯留を認めなかったことから,肋骨骨折端が心筋を貫いたのではなく,心筋に長時間接していたことで遅発性心破裂に至ったものと考えられた。多発肋骨骨折を伴う鈍的胸部外傷では,受傷後の遅発性心破裂を念頭におくべきである。

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© 2014 日本救急医学会
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