日本救急医学会雑誌
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症例報告
右膝痛と食欲不振のみを呈した閉鎖孔ヘルニアの1例
村井 智石川 雅巳
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2014 年 25 巻 12 号 p. 874-878

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抄録

我々は,右膝痛と食欲不振のみを呈した閉鎖孔ヘルニアの1症例を経験したので報告する。症例は胃全摘,胆摘の既往のある85歳の女性。来院2日前から寛解と増悪を繰り返す右膝の痛みが出現し,食欲低下があるため当院救急部を受診した。来院時,発熱と低酸素血症を認めたが,腹部症状は認めなかった。整形外科的疾患が疑われたが,右膝関節に異常は指摘されなかった。食欲不振の精査のため腹部超音波検査を施行したところ,keyboard signとto-and-fro signを認め,腹部造影CT検査で右閉鎖孔ヘルニアによる小腸イレウス,および食道逆流による誤嚥性肺炎と診断された。来院4時間後に緊急で鼠径法によるヘルニア門修復術を施行した。嵌頓腸管は虚血,壊死を認めず腸切除は行わなかった。術後,右膝痛は完全に消失し,抗菌薬投与で誤嚥性肺炎も改善したため退院となった。閉鎖孔ヘルニアはやせた高齢の多産女性に好発し,稀に腹部症状を欠くことがある。閉鎖神経圧迫による大腿から膝にかけての放散痛(Howship-Romberg徴候)を認めることがあるが,本症例のように限局的な膝の痛みでは見逃される可能性がある。やせ型の高齢女性が食欲不振や下肢痛を呈した場合は,本疾患を念頭において,腹部超音波検査やCT検査を併用して早期診断を行うことが重要である。

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© 2014 日本救急医学会
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