日本救急医学会雑誌
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症例報告
当院で経験した甲状腺クリーゼ8例における予後不良因子の検討
八木 良樹筈井 寛清水 木綿頭司 良介後藤 拓哉大石 泰男秋元 寛
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2014 年 25 巻 12 号 p. 879-884

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抄録

背景:甲状腺クリーゼは重症度が高く約20%は内分泌医不在の救命センターに搬送されている。目的:当院の甲状腺クリーゼの成績を明らかにし,予後不良因子を検討すること。方法と対象:2000年以降に甲状腺クリーゼで入院した患者の背景(年齢,性別,基礎疾患,抗甲状腺薬内服状況,ショック,血漿交換および循環補助施行の有無など)を検討した。また生存群と死亡群に分け,収縮期血圧,急性期DIC診断基準スコア,acute physiology and chronic health evaluation(APACHE)IIスコア,Sequential organ failure assessment(SOFA)スコア,総ビリルビン値,血糖値などを比較した。症例:症例は8例(平均年齢48歳,男性2例,ショック6例)で,基礎疾患は全例バセドウ病に関連し,発症時は全例で抗甲状腺薬の服薬ができていなかった。血漿交換はショックに対して循環補助を必要とした3例を含む4例に施行したが,循環補助を要した3例は全て死亡した。生存群と死亡群(各4例)の比較では,DICスコア(生存群vs. 死亡群,3.75 vs. 4.25,p=0.77)とAPACHE IIスコア(23.0 vs. 25.8,p=0.24)は同等で,SOFAスコア(5.3 vs. 10.0,p=0.04)に有意差がみられた。また収縮期血圧(mmHg)(135 vs. 80.3,p=0.25),総ビリルビン値(mg/dL)(0.9 vs. 3.7,p=0.19)と血糖値(mg/dL)(132 vs. 66.3,p=0.15)は有意差がみられないものの,死亡群で血圧と血糖値が低く総ビリルビン値は高かった。結語:重症度は高かったが半数は救命できた。SOFAスコアに加え,ショック,高ビリルビン血症や低血糖がみられる症例には注意が必要と思われた。

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© 2014 日本救急医学会
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