日本救急医学会雑誌
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原著論文
病院前救急診療活動を行う医師の活動中の感情と 普段の精神的健康状態との関連
市村 美帆高田 治樹増野 智彦吉野 美緒稲本 絵里松井 豊横田 裕行
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2014 年 25 巻 4 号 p. 141-151

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抄録
本研究の目的は,病院前救急診療活動(Doctor Ambulance: DAまたはDoctor Helicopter: DHによる活動,以下DA/DH活動とする)を取り上げ,DA/DH活動に伴う心理状態の実態を把握することである。加えて,活動に伴う経験がDA/DH活動者の精神的健康に与える影響についても検討した。対象はDA/DH出場を行っている医師で,有効回答は283名(有効回答率73%)であった。質問紙調査において,普段の活動前・活動中・活動後に感じていることや行っていること,精神的健康(The General Health Questionnaire; GHQ)の高さを測定した。その結果,DA/DH活動者は,活動の使命感を感じていながらも,活動前や活動中に現場や患者の状況がわからず,自身の能力を超えているかもしれないという不安を感じていることが明らかになった。活動後には,ともに出場した人や同僚と会話をすることによって,活動中の経験や感情の共有をしていた。またDA/DH活動者のうち全体の24.4%が精神的不健康の高リスク群であることが明らかになった。 高リスク群は,活動前に自分の能力を超えているかもしれない,批判を受けるかもしれないという不安を感じ,活動中には無力感や怒りなどを感じていた。DA/DH活動者のなかには,活動によって心的負担を感じ,精神的不健康に陥っている者が存在することが明らかになった。本研究の結果を踏まえると,DA/DH活動の活動支援システムとして,活動者が活動時に経験する不安や恐怖に焦点をあてた事前教育および訓練と,それらに対処するための組織的な取り組みが必要である。
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© 2014 日本救急医学会
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