日本救急医学会雑誌
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症例報告
食思不振後の低血糖性昏睡を契機にたこつぼ型心筋障害を発症した1例
上山 薫細見 早苗神崎 万智子坂田 泰史小倉 裕司小室 一成嶋津 岳士
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キーワード: 低栄養, 心電図変化, 糖尿病
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2014 年 25 巻 4 号 p. 159-164

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抄録
症例は61歳の女性。糖尿病に対して経口血糖降下薬で治療中であった。食思不振が3週間続いた後に昏睡状態で発見され,当救命救急センターに救急搬送された。来院時,血糖値24mg/dLであった。50%ブドウ糖液40mLの投与により意識レベルは速やかに改善したが,心電図にてII,III,aVF誘導にST上昇を認め,心エコー検査で心尖部の広範囲な壁運動低下がみられた。また血液検査上,クレアチンキナーゼMBと心筋トロポニンIは上昇していたが軽度であった。初回心電図のII,III,aVF誘導で認められたST上昇は1時間後には軽減し,3時間後には,II,aVF,V6誘導で陰性T波が出現した。急性冠症候群を否定するために緊急心臓カテーテル検査を行った。 左室造影で心尖部と下壁の運動低下を認めたが,冠動脈に有意狭窄は認めず,たこつぼ型心筋障害と診断した。その後は経過良好で,心電図上II・III・aVF,V5-6誘導に陰性T波は残存するものの,第7病日には心エコー検査で壁運動の正常化を認め転院となった。低血糖性昏睡を契機とした,たこつぼ型心筋障害の報告は少ない。食思不振後の低血糖性昏睡後に心電図異常がみられる場合は,たこつぼ型心筋障害も鑑別する必要がある。
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© 2014 日本救急医学会
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