パラコート中毒37例の上部消化管病変を病理組織学的に検討した。パラコートを服毒すると,初期病変として口腔や食道粘膜上皮の壊死,びらんがみられ,やがて肉芽組織で覆われる。これらはパラコートの接触による腐食作用で発生すると考えられた。長期生存例においては,上皮の再生像は乏しく,びらんは服毒後20日以上経過しても存在し,ヘルペス感染症を伴う壊死性舌・食道炎,食道・胃カンジダ症,食道サイトメガロウイルス感染症などの日和見感染症が発生した。これら後期病変の出現には,肺線維症に対して予防的に投与したステロイドの関与が示唆された。