日本救急医学会雑誌
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老年者の入浴中に発生した心肺機能停止症例の最近10年間の臨床的検討
秋山 久尚相馬 一亥大和田 隆今井 寛栗原 克由
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1999 年 10 巻 3 号 p. 132-140

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抄録

1987年4月から1997年3月までの最近10年間に北里大学病院救命救急センターへ搬入された65歳以上の老年者の入浴中に発生した心肺機能停止71例を対象とし,その背景因子を臨床的に検討した。1)症例数は年平均7.1人で,65歳以上の全受診症例の年平均約1.8%, 65歳以上の全心肺機能停止症例の年平均約8.1%を占め減少傾向がなく,2)累積症例数による男女比は女性が男性の2倍を占め,3)既往歴では頻度として高血圧症(46.3%)や糖尿病(27.8%)が多く,4)救急隊の現場到着時にはすでに心肺機能停止である症例が多く(98.4%),心肺蘇生術を施行するも死亡率は100%, 5)発生時期は12月,1月と冬季に夏季の14~20倍の発生頻度で,時間帯は20~24時に好発,6)全例がひとりで入浴中に発生し,発見されるまで平均43.9±33.2分,覚知より病院へ搬入されるまで平均31.5±12.8分を要し,7)入浴直前の飲酒症例は少なく,8) 1994年5月以降での入浴中に発生した心肺機能停止症例29例のうち承諾解剖が得られた22例(75.9%)の解剖所見としては,冠状動脈硬化症による虚血性心不全症例が多く(15例;68.2%)認められた。また頻度は少なかったが,脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血や急性大動脈解離症例も1例ずつ(4.5%)認められた。

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