日本救急医学会雑誌
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脳低温療法時の肺酸素化能に及ぼす口鼻腔内ケアの効果
岩永 康之相引 眞幸小倉 真治横野 諭小栗 顯二
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1999 年 10 巻 7 号 p. 407-414

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抄録

当病院集中治療部に入室し,脳低温療法を受けた16例を対象に,口鼻腔内ケアが脳低温療法時の肺酸素化能に及ぼす影響をretrospectiveに検討した。口鼻腔内ケアを定期的には施行しなかった非施行群(年齢15-85歳,男性1例,女性6例,来院時GCS 3-10点)7例,同ケアを1日3回以上施行した施行群(年齢4-80歳,男性4例,女性5例,来院時GCS 3-11点)9例とに分け,(1) P/F ratio, (2) CRP, WBC, (3)咽頭・喀痰培養,(4)胸部X線写真について,両群間で検討した。データは平均値±標準誤差で示した。結果:(1) P/F ratioが250以下と肺酸素化能が悪化した回数の全測定回数に対する割合は,施行群が8.0±3.4%,非施行群が36.6±10.1%(平均値±標準誤差)であり,施行群が非施行群に対して有意に(p<0.05)低率であった。(2) CRPは療法前は両群で差はなかったが,低体温中に施行群が4.3±0.8,非施行群が8.5±0.9mg/dlと,施行群が非施行群に比して有意に(p<0.01)低値を示した。WBCは両群間に有意差を認めなかった。(3)細菌検査では,両群でまったく同一の抗生剤の使用下にもかかわらず,施行群ではグラム陽性菌および陰性菌の両方が(陽性菌2種・陰性菌11種),非施行群ではグラム陰性菌(5種)のみが検出された。さらに非施行群では経過中に真菌が気管内採痰より検出されたが,施行群ではまったく検出されなかった。(4)脳低温療法中,非施行群に(非施行vs施行群:181±10.4% vs 0%)胸部X線写真上明らかな硬化像を高率に認めた。以上の結果より,脳低温療法中1日3回以上の口鼻腔内ケアが,肺合併症の予防に有効であった。

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