日本救急医学会雑誌
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全国医学部・医科大学における救急医学の卒前教育の現況と課題についてのアンケート調査結果報告
青木 克憲相川 直樹島崎 修次山本 保博
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2002 年 13 巻 12 号 p. 757-768

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抄録

目的:救急医学卒前教育の現況と問題点を明らかにする。方法:平成12年秋,全国医科大学・医学部80校(国公立51,私立29,回収率100%)に行ったアンケート調査の解析。結果:(1)救急医学の重要性を表明する大学が80%を占め,救急医学講座もこの10年間で29施設開設された(合計39施設)。85%の施設が一定の救急医学カリキュラムを実践し,全国的に必修単位化されほぼ全施設で救急専任医が教育に参加している。以上から,この10年間で,救急医学の卒前教育は体裁を整えたと判断できた。(2)医育機関における救急部門は,国公立・私立大学間のマンパワー格差が解消されていない(国公立3人,私立11人)。(3)救急医学の臨床実習は,80%の施設で,救急部(センター)外来で実施されている。94%の施設で一致している臨床実習の基本的理念は,学生の少人数グループと教員との対話による問題の提示,解釈,解決であるが,クリニカルクラークシップの導入は42%にとどまる。(4)医学生の医行為の拡大に66%の施設が賛意を示しているが,卒前教育の到達目標について80%以上の施設が一致しているものは,basic life support,静脈採血,静脈路の確保,心電図診断,動脈血ガス分析,血液型検査,エックス線画像診断だけで,医学生の医行為水準Iのレベルにとどまる。(5)救急医療の教育技法の研修に関して46%の施設が研修会を開いているに過ぎず,教員と学生間の教育に対する相互評価を卒前の臨床研修にフィードバックしている施設は60%にとどまる。(6)卒後臨床研修の必修化と整合性を持つ卒前研修目標のガイドラインを日本救急医学会主導で作成すべきと考える。

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