日本救急医学会雑誌
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破裂脳動脈瘤によるクモ膜下出血に対する開頭直達手術の治療成績
石川 達哉上山 博康数又 研瀧澤 克己磯部 正則前田 高宏牧野 憲一
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2002 年 13 巻 12 号 p. 779-784

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抄録

目的:過去5年間のWFNS grade別のクモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage; SAH)の治療成績をまとめ,現時点での治療の到達点と限界について検討した。対象と方法:1996年1月から2000年12月に外科的直達手術を行った315例の動脈瘤破裂によるSAHを対象とした。年齢は19-89歳(平均61.0±13.1)。破裂動脈瘤の部位は前交通98,内頸95,中大脳77,前大脳19,椎骨脳底動脈系26。術前WFNS gradeはI: 112, II・III: 80, IV: 72, V: 51例。GCS 6点以上の症例は全例外科治療,5点以下の最重症例ではマニトールの急速点滴や時間経過により神経症状が改善した症例に手術を行った。手術はできるだけ早期に開頭clipping術を行い,クモ膜下血腫や脳内・脳室内血腫が存在すればその除去を積極的に行った。治療成績は発症3か月後の状態をGlasgow Outcome Scale (GOS)で評価した。結果:WFNS grade Iは98%で転帰良好(GR, MD)となった。Grade IIおよびIIIでは転帰良好例は84%。転帰不良の原因は手術合併症と脳血管攣縮であった。Grade IVでは転帰良好例は61%,死亡率11%。脳内血腫などのinitial brain damageによりSD以下の転帰不良にとどまる例が多いほか,脳血管攣縮が転帰を悪化させる要因になっていた。Grade Vでは転帰良好例は18%,死亡率31%。転帰不良の原因はinitial brain damageによるものが大多数であった。他に80歳以上の超高齢者で転帰が不良であった。結論:開頭直達手術で軽症SAHは問題なく治療できる。しかし脳血管攣縮の発生率や重症例および80歳以上の高齢者では治療成績の限界があり,血管内手術との適当な役割分担をしていくことで成績の向上が望みうる。

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