日本救急医学会雑誌
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急性脳障害患者におけるIL-6値に関する研究
福田 充宏熊田 恵介山根 一和鈴木 幸一郎小濱 啓次平野 一宏
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2002 年 13 巻 6 号 p. 295-302

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抄録

急性脳障害患者において,血中IL-6値がどの程度増加し,経過とともにどのように変化しているのかを明らかにするため,脳障害患者の血中IL-6値を検討した。急性脳障害患者121例[脳血管障害51例,cardiopulmonary arrest on arrival(以下CPAOA) 33例,頭部外傷24例,髄膜・脳炎7例,その他の意識障害6例]を対象に,救急搬入時および治療経過中の血清中および髄液中のIL-6値を測定した。結果,救急搬入時の血中IL-6値の中央値は,髄膜・脳炎23.0,クモ膜下出血65.0,脳挫傷106.0,脳梗塞109.0,急性硬膜下血腫141.5,その他の意識障害166.5,脳内出血177.0, CPAOA 227.0(pg/ml)の順に高値を示したが,敗血症患者にみられる程の高値(敗血症36例の血中IL-6値の中央値は6055.0)を示していなかった。生存例の血中IL-6値は経過中に低下したが死亡例においては改善せず,脳死状態に陥った場合には病日とともに増加し,植物状態患者においては急性期には基準値に至らなかった。血中IL-6値とIL-10値のアンバランスが生命予後にかかわっており,クモ膜下出血患者や髄膜・脳炎患者での髄液中IL-6値は血中にくらべ異常高値(IL-6値の髄液/血液比それぞれ73.6, 26.3)を示していた。IL-6値は,systemic inflammatory response syndromeにかかわる指標としてだけではなく,脳障害の指標という視点からも捉えていく必要があり,全身とは異なった脳内での調節機構の存在の可能性が示唆された。

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